数学サタデイ【スピンオフ】～Winter’s Tale～ (ページ9)

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乗法ページ9

失礼します、と店員が大きなお皿に乗ったパエリアを持ってきた。

「ありがとうございまーす」

パクチャニョルが愛想よく答える。

「お前、いつの間に追加注文してんだよ！どんだけ食う気だ？！」

「いやぁ、奢りってなるとめちゃくちゃ腹減るんすよねー」

ルゥハンの拳骨がパクチャニョルにクリーンヒットした。

痛っ！と悶える様子は高校時代を思い出させる。

もうすぐ冬休みというどこか落ち着かないこの時期。
金曜の夜。
私とパクチャニョルとルゥハンは少し早めの忘年会を催していた。

積もる話を片付けているうちに夜は更け、もうすぐ土曜になりそうな頃だった。

「先生は帰らなくて大丈夫なんですか？奥さん待ってるんじゃない？」

「あぁ、遅くなるって言ってあるから大丈夫だよ。あいつそういうところ寛容だしな。」

「いーなー、新婚さん、いーなー、」

パクチャニョルが指を咥えて揶揄った。

ルゥハンは心底幸せそうな顔をした。

大人の余裕みたいなものがなんだか鼻につく。

「惚気ならいりませんからね。」

「うるさいなぁ。お前ら本当に変わんないよなー。今も頻繁に会ってんの？」

「まぁね。チャニョルのお家にはたくさんお世話になってる。チャニョル単体はうざいけど。」

私はテーブル中央に置かれたブイヤベースを鍋から自分の小皿によそった。

「ひっど！パクイケメンことこの俺のどこがうざいんだよ！」

相変わらずの大振りなリアクション。
私もルゥハンも、これに対するスルースキルは高い。

「毎回彼女の惚気話を聞かされる私の身にもなって？」

「え？Aちゃんそれはヤキモチ？」

「いい加減にして！」

「おい喧嘩すんなって！ガキか、お前ら」

ルゥハンが割って入る。
私たちはいつまでたっても彼の生徒から卒業できずにいる問題児だと思った。

「Aちゃんも惚気ればいいじゃん！何の報告もないから友達として萎えるよ？！」

「なんでチャニョルに言わなきゃいけないの」

「たしかに、Aのそういう話は俺も興味あるな、、、」

「先生までなんなんですか、別に惚気るようなことないですから。」

無言の圧力で問い詰められる。
2人してキラキラな瞳で見ないでほしい。

「デートでどこ行ったとかさ、Aちゃんがキュンときたこととか、そういうの聞きたいよ！」

パクチャニョルがまるで修学旅行の晩の女子部屋のようなテンションで騒ぎたてた。