Tea for two 【短編集】 (ページ7)

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cappuccino*4 ページ7

「レイさんの淹れるカプチーノ、すごくおいしい。」

この子はカフェの常連さん。
僕のカプチーノのファンになってくれたみたい。

「Aちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな～」

Aちゃんが初めてこのお店に来たときのこと。

僕は彼女から目が離せなかった。

似てるのだ。

顔の作りとかそういうのではなくて、もっと本質的なところで君はあの子に似ていた。

強そうなのに寂しそうなところが。

僕は思わず、お客さんである彼女にカプチーノを薦めてしまった。

店員として出すぎた行為だった気もするけど、それからAちゃんは僕のカプチーノのファンになったみたいだから良しとする。

Aちゃんは毎週ここにやってきた。

そうして僕と話をして行った。

あるとき、いつもとは違う曜日に彼女が来たことがある。

たまたま僕もシフトを入れていた日だった。

「どうしてもここのカプチーノが飲みたくて。」

そう話す様子はいつもとは違くて、とても傷ついているみたいに元気がなかった。

きっと嫌なことでもあったのだろう。

僕は嬉しかった。

もちろんそれはAちゃんが落ち込んでいることに対してじゃなくて、そんな気分のときに飲みたくなるのが僕の淹れるカプチーノだということに。

僕の淹れるカプチーノで少しでも癒されてくれたら。

実は秘密の話があるんだ。

Aちゃんに出すときにだけは、お砂糖をたくさん入れてるんだ。

ふわふわで甘くするために。

店長にバレたら怒られちゃいそうだね。

そんな可愛い常連さんも、やがてめっきり来なくなってしまった。

どこかに引っ越したなんていうことを風の噂で耳にした。

先にいなくなるのは僕の方とばっかり想っていたから、驚きだなぁ。

きっと君に会うのは、この前が最後だったんだね。

僕がクッキーをあげると(これも店長には内緒で)、すごく喜んで持ち帰って行った日。

初めての手紙を大切そうに持っていくあの子と重なったよ。

僕のしたことで誰かに喜んでもらえるって、どんなに良いことなんだろう。

僕はやっと、ここの世の中に愛着がわいたみたいだ。

今更遅いよって感じだけど。

それでも気付かず通り過ぎてしまうよりは、名残惜しい終わり方ができて幸せだ。