Tea for two 【短編集】 (ページ5)

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cappuccino*2 ページ5

僕が自分の期限を知ったのは高校生の時。

「5年くらいでしょうか。」

お医者さんが神妙な面持ちで言ったのをよく覚えている。

正直、あんまりピンとこなかった。

5年て、普通に考えたら短いんだろうけど、まだ先のことのように思ってしまった記憶がある。

それに、あのときは未練がなかったのかな。

僕は生まれつき、みんなと同じようにはいかなかった。

体が弱いせいで、学校も休みがちだった。

誰かにいじめられたりとか、そんなひどい思い出もないけれど、良い思い出もない。

これから会えなくなって寂しいような人もいないし、別に、5年後にこの世から消えると言われても抵抗がなかった。

入退院を繰り返していた頃のことだ。

「私、あなたのことが好きになっちゃったみたい。」

この子はたしか、隣の病室の女の子。
僕よりいくらか年下に見える。
話したこともないから名前も知らないが。

「ありがとう。でもきっと気のせいだよ。」

めんどうだから適当に返事をしてそれきりにするつもりだった。

なのに。

この子は毎日僕のところに来た。

「レイくん、あなたのために持ってきたの。」

そうして毎日なにかしらプレゼントをくれたんだ。

お手紙だったり、お花だったり、お菓子だったりした。

あるとき、いつも通りあの子がやってきた。

「見て、可愛いでしょ？あげる！」

今日はぬいぐるみを持ってきたんだね。

「本当だ、可愛いね。今日は僕からもプレゼントがあるよ。」

僕は夜に一人で書いた手紙を渡した。
手紙を書くのは初めてだったから、どんなことを書こうかかなりの時間悩んだ。
でも、少しワクワクしたのを覚えている。

女の子はものすごく喜んで、大切そうに持ち帰った。

僕と女の子はその日を境に文通を始めた。

言わなかったけど、彼女が僕の初めての友達だった。

毎日が少しだけ楽しくなった。

「君はどうして僕を好きになったの？」

僕は無神経にもこんなことを聞いたことがある。

彼女は答えた。

「一目惚れよ。あなたすごくイケメンだから。」

「へぇ。それで告白を？大胆な女の子だね。」

「もうじき死ぬんだもの、自分の気持ちを抑えたくないの。」

そう言って泣き出したんだ。

僕は驚いた。
この子はいつも強気だったからね。

僕は彼女を抱きしめた。
そうして泣いた。