Tea for two 【短編集】 (ページ1)

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hot cocoa *1 ページ1

「A、まぁ、その、元気出して、、、」

机に置かれたのは私の大好きなホットココア。

「甘いものでも飲んで、ね？」

そう言って私を慰めるのは同じゼミの親友ソラ。

なんでかって？

私は失恋したのだ。

「ありがとう、、、はぁ。私本当馬鹿みたい。」

「いいのいいの、誰だってそうなるわよ。」

「おいA！」

勢いよく教室の扉が開く。

やつは今日も騒がしい。

「見たかこれ！オ・セフン熱愛だって！お相手は美人海外モデル！やっべーよな？！」

「ちょっと！あんた馬鹿なの？」

私の代わりにソラが答える。

そう。

私の失恋相手というのはこのビョンベッキョン、

ではなく、超人気モデルのオ・セフンだ。

「え、お前マジで凹んでんの？馬鹿だな～自分がオ・セフンと付き合えるとでも思ってたのかよ～。安心しろ、セフンとこのモデル女ができてなくてもお前と結ばれることは百パーない。」

いつものノリでふざけたように話すベッキョン。

うるさいなぁ！と返す気力もない。

「そうね。自分でも自分が嫌になる。」

「あ、えーとごめん？、、、ぶっw」

「慰める気の無いやつは行った行った！」

ソラがベッキョンを追い払う。

ベッキョンの言っていることは至極正論だ。

そんなのわかるが、そういう問題じゃないのだ。

私だって、自分がここまでだとは思っていなかった。

画面の向こうのスターにここまでアツくなるなんて。

別にセフンと本気で付き合いたいと思っていたわけではない。

でも、虚しい。

私は結構、周りに驚かれるくらいにはセフンのファンだった。

はじめは彼のルックスに惹かれ、彼の出ている雑誌、テレビ、ファッションショーに、握手会、いろいろと手を伸ばしているうちによく知りもしない内面にも惚れた気になっていた。

オ・セフンは私の理想そのものだった。

そして、私の青春だった。

セフンのかっこよさなんて痛いほどにわかる。
このとびきり美人なモデルさんが彼に惚れるのもよくわかる。

2人はあまりに完璧で、別に張り合う気などないが、ちっぽけな自分と比べて果てしなく虚しくなる。

頭の中はこんなことの堂々巡りで、講義内容なんてまるで入ってこない。

2限が終わって、食堂が賑わい始める。

ソラがお昼ご飯に誘ってくれたが、私にこれ以上気を遣わせるわけにはいかない。

私は一人、外のベンチに腰掛ける。

私の心とは裏腹に、穏やかな秋晴れだった。