38.格子点 ページ38
気持ちの良い日曜だった。
青々とした芝生に背中を預ける。ちくちくと露を帯びた芝がくすぐったい。
「そんなところに寝ているとせっかくの綺麗な洋服が汚れますよ。」
彼が隣に腰掛ける。片手に茶色い紙袋を抱えている。
「別に構いません。そしたら先生が新しいの買ってくれるでしょ？」
「あはは、そうかもしれませんね。はい、これ。Aさん好きでしょう？」
キムジュンミョンはプラスチックの蓋がされている紙コップを袋から出した。
「パンを食べるならミルクティーがよかったのに。」
私は背中を起こして、知らないパン屋さんのカプチーノを受け取った。
「カプチーノが好きって聞いたから買ってきのになぁ、ダメでした？」
「レイさんの淹れるのがいいの。」
「それじゃあ今度、僕がミルクティーを淹れてあげるから。」
「意味わかんない。、、、っふふ。」
ゆっくりと流れる時間。
この公園の全部があたたかく思えた。
ピクニックをする家族、白詰草を編んで遊ぶ小さな女の子、並んでベンチに腰掛ける老夫婦、フリスビーを投げる男の人とキャッチするレトリバー犬、水に浮かんでいる鴨でさえ、しあわせに見える。
キムジュンミョンはバナナマフィンを頬張りながら難しそうな雑誌を広げている。彼のことだからおそらく、数学雑誌かなにかだろう。
私はその横顔をぼうっと見ていた。
珍しくかけている大きな黒縁のメガネのせいで、ただでさえ小さな彼の顔が更に小さく見える。
「そんなに見られたら顔に穴があきそうだよ。」
そう言いながら彼は雑誌をめくった。
「先生は私を可哀想な子って思った？」
「昨日の話ですか？」
キムジュンミョンは困ったように笑っている。
昨晩、私はこの男に話をした。
結構小さい時から一人で食事してることとか、家に帰ると知らない男の人がいて外泊しなきゃいけない日があるとか、そんなどうでも良いことをだらだらと語ってしまった。
それなりに感情的になった私を宥めるのは大変だったんじゃないかな、なんてつい昨日の出来事を他人事のように思い出す。
「私はすごくしあわせです。」
「寂しい気持ちのときに受け止めてくれて、嫌味な口を聞いても笑ってくれて、そんな人がいるのって、すごくしあわせだと思うんです。」
「だから可哀想な子って思わないで、先生。」
「わかった。」
彼は頷くと、私の前髪にキスをした。
甘いマフィンの香りがした。
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月子(プロフ) - はにはにさん» はじめまして、コメントありがとうございます（ ; ; ）そんな風に言っていただけてとても嬉しいですm(_ _)m始めから最後まで読んでくださり、ありがとうございます（ ; ; ） (2017年10月15日 9時) (
レス) id: a6497a8f4f (このIDを非表示/違反報告)
月子(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとうございますm(_ _)mこんなお話を楽しみにしていただけて嬉しい限りです（ ; ; ） (2017年10月15日 9時) (レス) id: a6497a8f4f (このIDを非表示/違反報告)
はにはに(プロフ) - 初めまして！このお話が出来たばかりの頃から読ませて頂いてたのですが本当にこのお話が大好きでした！更新の通知が来る度にワクワクしてましたし私普段コメントはしないのですが一言言いたくて初めて感想のコメントをさせていただきました。新作も期待してます＾＾ (2017年10月9日 16時) (レス) id: 3c6e49ba34 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして、久しぶりに更新が待ち遠しい作品に出会えて嬉しいです！番外編？も期待してます（＾Ｏ＾） (2017年10月9日 0時) (レス) id: 96df8fe841 (このIDを非表示/違反報告)
月子(プロフ) - mareさん» こんばんは〜嬉しい限りです(T . T)こんなゆるゆる〜なお話ももうすぐ完結なので、こうしてコメントをいただくことができて本当に嬉しいです、、、ありがとうございます（ ; ; ） (2017年10月6日 20時) (レス) id: a6497a8f4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月子 | 作成日時：2017年7月30日 19時
