終わるな、夏よ終わるな【em】 (ページ6)

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2話ページ6

em side

　まるで悪夢から覚めたように、ベッドから跳ね起きる。短針は9時の数字を指していた。室内は電気を付けたときのように明るかった。カーテンを開くと青空が広がっている。そういえばあの日のスカートと同じ色。ふとそんなことを思ってしまって、頭をぶんぶん振りその思考を頭の外に追いやる。

　このままずっと考えていても、思い出したくないことばかり考えてしまいそうだ。朝ごはんなんか食べても胃液と共に吐き出してしまいそうなので、コップ一杯の水だけ飲んだ。そうだ、気分を変えようと思い、本を読むことにした。部屋の大部分を占めている大きな本棚から、適当に本を一冊抜き取った。適当なページを開き、文字の羅列を目で追っていく。文章の内容は一切頭に入ってこなかったが、他のことを考えずに済むなら、それでいい。

　何ページほど読み進めたのだろうか。内容は頭に入っていないため、そもそもこの本が何について書かれているのかすら分からない。パラパラとページをめくる音だけがする。嗚呼、なんてつまらない一日。本を閉じて外に散歩でもしようとしたとき、後ろから何かの圧を感じた。

　『えっ!?』

　その“圧”は私を通り抜けたかのように表れた。

A「エミさんー。生きてるー?」

　『えっ…生きてますよ？』

　いやこれは別に後ろから驚かされたことに驚いているのではない。いつもの昼休みをこうやって邪魔されているから。むしろ最近では何も感じないので驚いたふりをしてあげているくらいだった。だが、問題はその驚かせてきた相手だ。そこには、いつもみたいに悪戯な笑みをする、Aさんの姿があった。なぜここにAさんが…？昨日のことは一体何だったのだろう。まるで夢のように突如目の前に現れたAさんに、驚かないわけがなかった。

A「ねーねー。本ばっかり読んでてもつまんないでしょ？もっと楽しいコト、しよ？」

　嗚呼、やっぱりこの笑いはAさんのものだ。昨日までと何の変わりもない、Aさん。この状態が夢なのか分からないけど、夢だったとしても。明日も側に居たい。

　空は、昨日買ったソーダ味のアイスのように周りを冷やしてくれているようだった。