終わるな、夏よ終わるな【em】 (ページ5)

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1話ページ5

A side

　気がつくと、家のベッドの上だった。あれ？どうして？あの時に死んだはずなのに…疑問はたくさんあった。大きなものを一つ上げるとすれば、物をすり抜けていられる。というか物に触れない。ついに人間でなくなってしまったのかな…と不安になる。それと同時に、この状況が楽しいな、と感じた。楽しいことは、エミさんに報告しよう！そんな理由で、エミさんの家に行くことにした。

　玄関で靴を履き替え…られない。だって触れないのだから。どうしよう…と思ったが、仕方がない。そのままで外に出た。床を歩いている感覚はないので、多分このまま外に出て足の裏が汚い…ってことはないだろう。そうだと思いたい。ドアノブを捻ろうとしたが、そう言えば触れないし通り抜えられるんだった。

　数分普通に歩いていたが、よく考えたらエミさんの家まで直線で行けるのでは…？そう思い家を通り抜けていこうと思ったが、関係ない人の日常を覗き見してしまうということになりかねないので、仕方がなく普通にエミさん家まで走って行った。

　インターホンを押せないのだが。さすがに幼馴染だからと言って勝手に入っていいものなのか…まあ仕方がなく失礼しまーすと小声で言いながらエミさんの部屋に向かう。きっと今日も部屋で本読んでるんだろうなー。

　エミさんの部屋に行くと、予想通り本を読んでいた。難しくて何の本なのかは分からなかったが、本ばかり読んでて楽しいのだろうか。どうせだしいつもの図書室の時みたいに後ろから驚かせてやろうか。そう思い、後ろから肩に手を掛けようとする。

　だが、いつもと感覚が違うからなのだろうか、力が勢い余ってしまい、エミさんの体を通り抜けてしまった。

em「えっ!?」

　エミさんは驚いてその場を動かない。それが数十秒続いたもんで、こっちも心配してしまう。

　『エミさんー。生きてるー?』

em「えっ…生きてますよ？」

　かなり動揺しているようだ。いつも何をしてもあまり驚かないのと違って、今日のエミさんは面白い。

　『ねーねー。本ばっかり読んでてもつまんないでしょ？もっと楽しいコト、しよ？』

　いつも本を読んでばっかりのエミさんを半ば強制的に外に出す。いつものように腕を掴もうとしたが、その手は彼に触れることはなかった。ああ、やっぱりエミさん、好きだ。ずっと、ずぅっと側に居たい。

　外では、あたり一面の水色の空が広がっていた。