終わるな、夏よ終わるな【em】 (ページ4)

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em side

A「しょうがないエミさん。別のところに買いに行こっか。」

　そういい、外の暑さを見て少し躊躇った後、走り出す。また走るのかと思ったが、こんなに外が暑いんだ。炎天下の中を歩くよりも走って涼しいところに移動する方が得策だろう。ちょっと待ってくださいよ、と声を掛け、太陽の下足を速めた。

　数十分後のことを知る人は誰もいなかった。

A「とーちゃーく！」

　こんなに暑いのに相変わらず元気やなーとか他人事のように思いながら、数秒遅れてコンビニに入った。アイスコーナーには、おそらくついさっき補充されたのだろう。結構な数のアイスがあった。

A「すいませーんこれくださーい！」

　「ありがとうございました！」

　あっという間に会計を終わらせている。早く行こ！と言い、すぐ外に飛び出す。またいつもの公園のブランコに座るのだろう。

A「これ、買ったから、一緒に半分こして食べよ！」

　そう言い渡されたのは半分にして食べられるアイス。もう一つ買った方がたくさん食べられるのに、と思ったが、きっと面白半分なのだろう。彼女の脳内は常に楽しいか楽しくないかの2択だ。

　『あんまり走らないでくださいよ？車に轢かれたりしたら危ないですから。』

　その時だった。今の発言でゲームで言うフラグが立ったのかもしれない。きちんと信号は青だった。ものすごいスピードで右から左へと動く白い何かがあった。

　次の瞬間、彼女が穿いていた水色のスカートに、赤い水玉模様。どんどんシミが広がり、やがて赤いスカートへと為り果てた。

　その後のことは、よく覚えていない。家に帰っても、もしあの時彼女の近くでちゃんと止めていられれば、もし別のコンビニに行かなければ、もしあの子にアイスを譲らなければ、私があの時にアイスを食べようなんて言わなければ…。どんどんネガティブになってしまっていた。

　その日からだった。私がアイスを嫌いになったのは。

　彼女から最後にもらったアイスを半分に割り、片方は冷凍庫の中に入れておき、もう片方は見たくもなかったのでごみ箱に捨ててしまった。