ドッペルゲンガー (ページ5)

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あ

｢…やっぱり来た｣

いつものように定時で帰って、壁の裏から自分の部屋の前を覗き見ると、

そこには毎度の如くジミンがいる。

ほら、来てるじゃん。

なにが、行ってないって、だよ。

嘘つき。

来てる理由も、嘘つく理由も、全部吐くまで問い詰めてやる。

一度深呼吸をしてから、廊下のど真ん中に飛び出した。

｢ちょっと、そこでなにしてるわけ？｣

JM｢…｣

ドアを見つめたまま動かないジミン。

何も言わないんですけど。

聞こえないフリ？

上等。

｢来てないとか嘘ついてたけど、来てるじゃん。

何しに来てんの？｣

JM｢…｣

｢気持ち悪いんだけど｣

JM｢…｣

｢は？シカト？｣

話しかけ続けても、一向にうんともすんとも言わない。

ふざけてんの？

ここまで来てカチ無視とか、いい加減にして。

1ミリも動かさない顔を覗き込む。

あ

｢ねえ聞いてん、の…｣

あ

咄嗟にジミンから距離をとった。

なにかされたわけじゃない、ただ本能的に。

そんな怪しい動きをしてる私には見向きもしないで、去っていくジミン。

あ

いや、ジミン？

ジミンだけど、ジミンじゃない。

わからないけど、直感的にそう思った。

慌てて鍵を開けて部屋の中に入る。

ものすごく気味が悪い。

だって、ジミンの顔、

あれは故意的に無視してたような顔じゃない。

まるで、本当に聞こえてないみたい。

私の存在なんか気づいてもないみたいな、そんな顔。

でも、確かに私はジミンに声をかけた。

聞こえないような声の大きさじゃなかった。

｢…ジミンの幽霊？｣

急に"幽霊"という二文字が頭の中に浮かぶ。

そうだ、そうだよ。

あれはやっぱりジミンのようでジミンじゃない。

だけど、ジミンは死んでるわけじゃないし…。

じゃあ、幽体離脱？

わからない。

本当にわからない。

けど、おそらく生身の人間ではないと思う。

電流が体を駆け巡ったようにぶるっと寒気がした。

…明日、あの人にでも相談してみようか。

今日の夜はほとんど眠れなかった。

あ