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私と翔さんは一緒に玄関扉をくぐった。
ガチャンと扉が閉まるなり私は翔さんに抱きすくめられる。
「わっ」
「やっと抱きしめられました」
「もう、部屋上がってからにしてよ」
「十分我慢しました」
首をひねって顔を見上げれば翔さんは拗ねたように唇を尖らせていた。
会社で見る無口で無表情な能面みたいな顔とは似ても似つかない。
ぎゅっと身体を抱く腕に力が入って私はその胸を押した。
「ほら、お水飲みましょう」
「酔ってませんよ」
「それでも飲むの」
「わかりましたよ」
渋々と言った様子で腕が離れていく。
私は自分で言っておきながら少し寂しさを感じつつ、翔さんの背を押して部屋に上がった。
コポコポとグラスに水を注ぎながら私はソファに座っている翔さんに言葉を投げる。
「でも翔さん、結構飲んでたよね」
「ええ、飲みました」
「なんで？」
「貴女が相葉くんと話していたから、意外に理由がありますか？」
「それだけ？」
「十分でしょう」
伊達眼鏡である黒縁眼鏡を眼鏡スタンドに収めた翔さんは大きな瞳で私を見上げていた。
純粋で真っすぐな目はそれ以外に何の理由があるのかとでも言いたげである。
「もしかして、やきもち焼いてくれたの？」
「焼きましたよ盛大に。だから、今日は黙って俺に抱きしめられるの刑です」
「ふふ、それ全然罰にはなってないけどね」
子供みたいなことを言う翔さんに笑いながら私は水の入ったグラスを差し出した。
大きな手がグラスを取り上げて口元に持っていかれると、白い喉を上下させて翔さんが水を飲む。
それを見ていたら目が合って、翔さんは水を飲むのを止めた。
「良いこと思いつきました」
「良いこと？」
なんだろう、なぜか嫌な予感。
「口移しで飲ませてくださいよ」
「ええっ！」
「ほら、どうぞ」
翔さんは笑顔で私にグラスを押し付ける。
押し付けられた私はその態勢のまま挙動不審。
いくら何でも恥ずかしすぎてそんなことできそうにない。
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
