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歩き疲れてフードコートに立ち寄った。
にぎやかな店内はしかしカップル二人が腰を下ろす余裕くらいは持ち合わせているようだ。
Aが髪を揺らして椅子に腰を下ろすのを見ながら俺は遠くに見えるメニューに目を凝らす。
「なににする？俺買ってくるよ」
「私も行くよ？」
「いいって。歩き疲れたでしょ？これくらい俺に任せてよ」
「ふふ、そっか……ありがとう、雅紀くん」
「うん」
妙な懐かしさだ。
Aがいつも俺だけを見ていて、俺にだけ笑ってくれる。
無防備な笑顔に触れないように気を付けるのは学生時代に染み付いてしまった癖だ。
足を踏み出しかけて止まる。
振り返って、不思議そうな顔をしたAに手を伸ばした。
頬に触れる。
柔らかい。
すべすべだ。
「雅紀くん……？」
恥ずかしそうに視線が逸れる。
なんだかひどく満たされて、俺は唇の端を持ち上げた。
「ふふ、触りたくなった」
「もう、恥ずかしいよ……」
ぷくっと頬を膨らませたけどAが嫌がるそぶりはない。
俺はまた更に笑みを浮かべて、「行ってくる」と呟いて席を離れた。
「しまった」
購入列に並んでメニューを見上げた俺は肝心の注文を聞いてくるのを忘れていたことに気が付いた。
くるっとAの方を振り向く。
Aはスマホに目を落としていた。
同時に後ろに並んだ数人の客が目に入ってまた前に視線を戻す。
一人会計が終わって、一人分列が進む。
戻って並びなおしていたら時間がかかる。
この後Aが乗りたがる乗り物のどれかを諦めなければいけなくなるかもしれない。
そう思って、俺はまたメニュー表を見上げた。
Aの注文を聞かなくたってAが食べたがる料理を選んで買って行くことなんて俺には朝飯前だ。
もっとも今は昼飯だけども。
メニューの中からAが好きそうな具材のハンバーガーとアイスティーを選択して席へと戻る。
俺に気が付いて顔を上げたAがひらひらと手のひらを揺らした。
「お待たせ」
「ありがとう雅紀くん」
俺の方にはアイスコーヒーを、Aの前にアイスティーを置いてハンバーガーを手渡す。
「あ、美味しそう」
「合ってた？」
「合ってる」
内心ガッツポーズをしそうになって誤魔化す様に紙コップに入ったアイスコーヒーを揺らす。
氷が立てる涼やかな音が喜ぶ熱をすこしだけ冷ましてくれる気がした。
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
