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「とりあえずここに出していこう」
「わかりました」
「じゃあ俺こっちから出すから、そこ並べてくれる？」
「了解です」
思いがけず櫻井さんと二人になって心臓がバクンバクン跳ねている。
だって、好きな人と個室に二人きりは心臓に悪い。
資料室だけど。
密室には違いない。
「これは？」
「それこっちですね」
「こっちのは……こいつだな」
「そうです。あ、これって要らないんじゃないですか？」
「そうだな。あとでシュレッダー掛けよう」
緊張しながらも、櫻井さんと二人きりというのは嬉しくて。
地道な整理の作業も楽しく思えてくるから不思議だ。
昨日あんな夢を見たけどやっぱり夢は夢。
現実には少しくらいいいこともあるものだ。
ちらっと盗み見れば櫻井さんの真剣な顔がある。
やっぱり、好きだな……そう思うけど。
どうしても脳裏に高田さんの姿がちらついてとても告白しようなんて気にはならない。
見てるだけでいいの。
好きだなって思って、聞こえてくる楽し気な会話にもやもやするだけでいい。
時々二宮くんに文句を吐き出すくらいで、それで、いい。
私にはそのくらいがちょうどいいんだ。
わかってる。
「よし、お疲れ様」
「お疲れさまでした」
小一時間で櫻井さんと二人きりの作業は終わってしまった。
もう少しあってもよかったのになぁと名残欲しい気分になる。
「よし、よく頑張ったから加西にご褒美あげるよ」
「ご褒美……？」
「付いておいで」
「？」
よくわからないまま資料室を出る櫻井さんの後を追う。
櫻井さんがやってきたのは休憩室だった。
カーテンで仕切られていて中は見えないが、櫻井さんは片手でカーテンを開けると私を手招きした。
「ほら、おいで」
「はい……」
取り敢えず言われるまま中に入るけど、私には何が何だかわからない。
櫻井さんは自分も休憩室に入ると事務所と隔てるカーテンをパッと閉じた。
それから冷蔵庫の前にしゃがんで扉に手を掛ける。
「今日ようやく手に入ったから」
「え？」
呟いた櫻井さんの口元には笑みが浮かんでいる。
ガコンと音がして冷蔵庫の扉が開くと、櫻井さんは中に手を入れて何か白い箱を取り出した。
「ほら、これ」
「これは……？」
「シュークリーム」
差し出された箱を受け取ると櫻井さんはそう言って私に優しい笑みを向けた。
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iCHiKA(プロフ) - tubinさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！お楽しみいただけたとのこととても光栄です。今後もお楽しみいただけるよう頑張らせていただきますね！ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
tubin - すごくおもしろかったです！！ 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください！！ (2021年8月22日 20時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちき様、いつもありがとうございます！糖度高めを目指して頑張ったお話でしたが、お役に立てたようで良かったです。こちらこそご賞味ありがとうございました。 (2021年8月21日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 最近疲れ気味だった私には翔さんの甘さが最高のご褒美になりました。ご馳走様でした( ´ω` )/ (2021年8月19日 19時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年8月15日 14時
