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青side
その夜。
慎太郎から電話がかかってきた。
慎「樹...?...あ、あの...あのねっ..俺、慎太郎なんだけどっ」
既にぐすぐす鼻を鳴らした状態でさ、何だか笑ってしまった。
樹「ははっ笑..落ち着けよ、な?」
スーハーと息を整える音がして、すっと話始める前の呼吸音。
慎「ごめんねっ、樹。..俺、諦める樹を見たくなくてっ..そ、の」
ああ見えて、本音をこぼす時に口下手になる慎太郎が、一生懸命話し始めた。
全部病気のことも調べた。
最終的に、俺がいなくなることも分かったって。
樹「な?...もう、止められないんだ。だから...」
慎「じゅり...今からもいなくなるの?...」
樹「...えっ.....」
慎「今はここにいるのに?...今も諦めるの..?」
ハッとした。
先のことばかりで、『今』が抜け落ちていた。
慎「俺と電話してんのは、田中樹でしょ?...だからっ..だからっ、今を生きてよ..お願いだから」
そう言って、感情のない電子音が流れる。
樹「んはっ!....言いっ放しじゃねぇか笑」
笑ってはみたけど、目から溢れ出す水分を止められなかった。
樹「....い、ま....か....」
いつか、そう思えたらいいな....なんて。
少しだけ、明るい「いつか」を想像することができたんだよね。
•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚
黒side
樹は本当に少しずつ、できないことが増えていった。
挙げようとしたら、A4用紙が埋まるんじゃないかってくらい。
冗談じゃないよ。
冗談だったらって思えば思うほど、胸が苦しい。
だって、嘘じゃなくて真実だということを知りすぎているから。
あまりにも間近で見すぎて、受け入れるしかなかった。
踊ることが出来なくなった。
ペットボトルを持てなくなった。
これくらい、細かく箇条書きできる。
樹「俺...い、..つか...らっぷ...できなく..なる..な」
あいつが、SixTONESの武器になればと磨き続けたもの。
言った通り、武器にしてくれたもの 。
有言実行の男なんだよ、田中樹っていう人間はさ。
北「......うん。」
その男が言うんだ。
ちょっと意味が変わるけれど、きっとそうなるんだろうなってすんなり頷いてしまった。
樹「俺さ、最後までSixTONESの田中樹でいたいんだ。だから......」
その後に続いた、諦めたことにどうしても涙が止まらなくて...。
北「いやっ...なんで...ずっと..じゅり..でしょ」
駄々をこねる俺の頭を、震えるぎこちない手が何度も往復した。
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みかん(プロフ) - 嶺音 蒼空Inn?cenceさん» コメントありがとうございます。私のペースとなりますが、お待ちいただけると嬉しいです!ぜひ、今後もよろしくお願いします。 (2020年9月26日 19時) (レス) id: 89ba736677 (このIDを非表示/違反報告)
嶺音 蒼空Inn?cence(プロフ) - いつも楽しく読んでます!私は病気系の物が好きで探し回っていたところをこのお話に辿り着きました!これからも面白いお話が出るのを楽しみにしてます!がんばってください! (2020年9月26日 12時) (レス) id: 316022cad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかん | 作成日時:2020年9月25日 22時