プロローグ ページ1
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此処は横浜の街を見下ろす丘の上、緑の茂った山道のただなかの海の見える墓地。無数の白く小さい墓石が整然と並んでいる。
妻に早くに先立たれて十数年。子は居らず、未来への希望もなく、唯寝て起きては妻の墓に縋り付く日々を繰り返していた。
あの日迄は___
よく晴れた日の事だった。其の日もいつものように妻が生前好んでいた花を手に此の場所へ訪れた。
花を手向け手を合わせ、何十何百と繰り返した泣き言を一つ、二つと溢す。ふと今日は天気が良いのだから、散歩でもしようかと空元気で顔を上げた時だった。
目が合ってしまった。
柔らかい日差しに照らされて、キラキラと輝く赤い髪が特徴的な異国風の
『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』なんて美人はよく花に喩えられるが、彼女は現世の物で喩えるのは失礼だと思えるような美人だった。
こういう人を絶世独立の美女と云うのだろう。
余りの衝撃に言葉が出ず固まっている私に彼女は軽く会釈をして通り過ぎていった。早る心を落ち着かせ、彼女の向かった先を見てみると、不思議な事に其処に人影はなかった。
然し瞬きの間に消えた彼女に驚く事はなく、嗚呼彼れは幻の類いだったかと妙に納得した。
幻でも何でも良かった。唯彼女を一目見れた事に大きな意義があった。唯々詰まらなかった人生を意味のあるモノにしてくれた。そんな出会いだった。
其の日からは以前迄と違った心持ちで毎日墓に花を添えていた。毎日、毎日また彼女に会えないだろうかとあの墓地に足を運んだ。
一度だけで良かった。一言だけ、哀しみの淵から掬い上げてもらった事への感謝が伝えたかった。それだけだった。そう思っていた。
今思えば私は唯、自身の欲に溺れていただけだったのだろう。それらしい理由に託けて、彼女にもう一度会いたくて、言葉を交わしてみたくて、触れてみたくて、そんな思いで亡き妻を蔑ろにしていた。
きっと其のバチが当たったのだろう。
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軌道修正したのは良いけど、本当にこの怪文書から書き始めて良いのかは些か疑問
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作者名:手羽さき x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月26日 22時