いのありtime (ページ35)

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ar side

控え室に戻ると、他のメンバーは誰もいなかった。

「なんだよ…」

独り言を呟いた瞬間、ドアが開いていのちゃんが中に入ってきた。

「あれ？大ちゃんどこにいたの？」

「ん…ちょっと外の空気吸いたくて」

「マリッジブルーってやつ？」

「うるせーよ！」

肩を震わせながらクスクスといのちゃんは笑った。

さっきまで昔のことを思い出していたせいだろうか…

なんとなく胸の奥が疼いてしまう。

「大ちゃん明日、朝早いんでしょ？」

「ん、まぁ…」

「早く帰ってお肌のケアしないと」

そう言ってまたクスクスと笑った。

「そうだな、帰るか」

散らかっていた荷物をバッグに詰め、帰り支度を始めると、ふいにいのちゃんが優しい声で話しはじめた。

「大ちゃん…結婚おめでとう」

「え、、あ、ありがと」

「大ちゃんには幸せになってほしいって思ってる」

「うん…」

泣きそうな顔をしてるように見えるのは俺の気のせいだよね？

「本当におめでとう。明日の式楽しみにしてるね」

ふわふわの笑顔を俺に向けるから、自然と俺も笑顔になった。

やっぱりいのちゃんの空気感は好き…

「うん」

「よし、帰ろ！」

…………

そう言ってドアノブに右手をかけた、いのちゃんの服の裾をくいっと引っ張った。

「……っ、⁈」

「あのさ…」

「ん？」

「ぎゅって……してくれない？」

「え？」

「ごめん…今だけだから……」

「……………いいよ、マリッジブルーだもんね？」

俺に優しく笑いかけるいのちゃんは、昔から何も変わらない。

なんにも変わらないよ…

「バカ…」

ごめんね…

いのちゃんとの関係はこの先も変わらないはずなのに。

急にいのちゃんがどこかに行ってしまう気がした。

変だよね…

結婚するのは俺なのに……

．

だけど明日は神様の前で誓う日だから。

だからその前にもう一度だけ…