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in side
メンバー全員での写真撮影が終わり、個人での撮影が順番に始まった。
いつも1人でカメラの前に立つ時は、レンズの向こうに大ちゃんがいることを想像している。
そしたら、自然と笑顔になれるんだよ。
俺の心の真ん中はいつも大ちゃんでいっぱいだから。
大ちゃんはどんなことを考えて撮影してるのかな……
.
撮影を終えて楽屋に戻る途中、廊下の隅で1人ベンチに座る大ちゃんを見つけて心が踊った。
人通りも少ない場所だから、ゆっくり話せるかもしれない。
俺は一旦楽屋に行き、自販機で2人分の飲み物を買ってから大ちゃんの元へ戻った。
ふふ…大ちゃんにコーラあげたら子供みたいに喜ぶだろうな。
今にも飛んでしまいそうなくらい軽やかな足取りで大ちゃんのところへ向かった。
「大ちゃ……」
そう声をかけようとしたけど、すぐにやめた。
大ちゃんが隣に座る山田とキスを交わしたあと、すごく嬉しそうにはにかんでいたから。
「こんなところでやめろよな。誰かに見られたらどうすんだよ」
『大ちゃんが可愛いすぎるからだよ』
「ばか!……って、いのちゃん⁈」
大ちゃんに名前を呼ばれるまで、自分がそこに立ち尽くしていたことを忘れていた。
「あ、ゴメン………2人はその…付き合ってる、の?」
「あ……うん」
照れたように笑う大ちゃんを見て、胸の奥がチクチクと痛んだ。
大ちゃんって、こんな風に笑うんだ…
俺には見せてくれない顔だよね…
「いつから?知らなかったよ……言ってくれたら良かったのに」
俺って今ちゃんと笑えてる?
平気なフリして言ったつもりなのに、少し声が震えてた。
「うん……ごめんね」
大ちゃんからの"ごめんね"は今聞きたくないよ。
「それよりいのちゃんどうしたの?何かあった?」
俺の片想いが今終わったんだ…
もちろん、大ちゃんにそんなこと言えるわけもない。
「ううん、何もないよ」
精一杯の笑顔を見せて、俺は1人で来た道を戻った。
さっきまではあんなに最高の気分だったのに、今は鉛みたいに両足が重い。
大ちゃんのこと、本当に好きだった…
大好きだった…
今でも俺の心の真ん中は、大ちゃんで溢れてる。
手に持ったコーラから、水滴がポタポタと落ちていった。
まるで俺の気持ちを代弁してくれているみたいに。
end
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作者名:Tea time | 作成日時:2021年3月15日 18時