彼を落とすための攻略本：イギリス 【APH】

ゆめごごち ページ27

side. you




これは夢だ。


夢だと思いたい。




お迎えの黒い車にゆられながらそんなことをを考えていた。



しかしこれはどう足掻いて現実。



だから


隣にいるイギリスさんが




私の手をさっきからずっと握っているのも現実。




顔はそっぽを向いているから表情は伺えない。




さっきとはまるで別人





『どうか私の家まで攫(さら)われてくれないか
麗しい私の花嫁』




思い出したら急に恥ずかしくなってきた。




あれはきっと演技だ。



私を不安にさせないためのその場しのぎのお誘い。




それか、からかっているのだろう。


でも




(手の甲のキスは？
それに今繋がれているこの手は？)




演技にしてはやりすぎではと思いつつ




正直、期待してしまう。




こんな時攻略本があれば分かるのに。




もちろんそれは家にお留守番で




持ってきても手持ち無沙汰だと判断したからだ。





(わかんない・・・)




イギリスさんはこれが当たり前なのだろうか。




もし私以外の子が同じ状態でもするのではないのか。





(全然わからないよ、イギリスさん)




思えば攻略本のことを通して彼を見てきた。




彼を知りたいと思う時は
いつも攻略本に手を伸ばしていた。




でも今この状況は
あの本が無ければ絶対に起きなかったもの。




妖精さんともお話できるようになったのも
あの本のおかげ。





そうだとしても
本当にこのまま攻略本を使い続けることは正解なのだろうか。




《大丈夫だ、そのままで入ればいい》




《あれが無ければお前は何もできないだろう》



《あれが全て解決してくれる》




｢・・・・・・｣





そうだ、それでいいんだ。




だってあの本を使わないとイギリスさんは私を見てくれない。




今更何を馬鹿なことを考えていたのだろう。




｢おい、A？
どうした、顔色悪いぞ｣




私の手から何かを感じ取ったのか



イギリスさんが私の顔をのぞき込む。




｢もうすぐ着くから我慢できるか？｣




｢・・はい、お気遣いありがとうございます｣






さっきまで暖かかった手はいつの間にか








怖いくらいに冷えていた。

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