ココロの距離 (ページ12)

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今日は数人のメンバーとテレビ収録の日。

収録の待ち時間、俺は楽屋のソファで膝を抱えて顔を埋めていた。

『大貴大丈夫？』

そんな俺を見て知念が声をかけてきた。

「大丈夫、、じゃない…」

『何かあった？』

「……」

『ちょっと来て』

知念に促されるまま楽屋を出て、近くの使っていない部屋へ移動する。

『それで？いのちゃんと何かあったんでしょ？』

なんでコイツはこんなに勘が鋭いんだよ。
どこまで気づいてんの？

もう、なんでもいいや…
今はそんなこと考えたくない。
俺は諦めて知念に話すことにした。

「……好きって…言われた」

『ふーん……それで、なんで元気ないの？』

「…いのちゃんのこと、、振った…から…」

『はあ？！何で？だって、大貴も好きなんでしょ？』

そこまでお見通しかよ。

「うん、まあ…」

好きだよ。ずっと好きだった。

いつから好きになったのかなんて分からないけど、俺にとっていのちゃんは特別な存在。

だから、いのちゃんの告白はすごく嬉しかった。
だけど…

「好き、、だからかも。いのちゃんもうすぐ30歳になるし、俺も来年…だから、この先のことを考えたら結婚、とかさ、いのちゃんもするんだろうなぁって。だから、いのちゃんとはこのままただのメンバーとしていたほうが…」

『大貴って本当バカ！』

「はぁ？！バカって…」

『そんな余計なこと考えてないで、いのちゃんに好きって言えばいいんだよ！簡単なことでしょ？』

「だって、、」

『この先どういう選択をするかは、いのちゃんが決めることでしょ。いのちゃんの気持ちを決めるのは大貴じゃない。結局大貴は逃げたんでしょ？いのちゃんのためって言い訳をして』

「そんなことっ、、」
……あるのかもしれない。

勝手にいのちゃんの未来を想像して、そこに自分がいないことが辛くて逃げた。

自分が傷つく前に、いのちゃんを傷つけて逃げたんだ。

それに、いのちゃんの気持ちなんて全く考えていなかった。
あんなに真っ直ぐ"好き"って言ってくれたのに…

俺は今の関係を壊したくなくて、ずっと自分の気持ちを隠してたのに…

「知念……俺、いのちゃんが好き」

『それ、僕に言っても意味ないからね。本人にちゃんと伝えなよ、バカ大貴』

「おう。…バカは余計だわ」

仕事が終わったあと、連絡もせずに急いでいのちゃんの家に向かった。