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床に座り込んでいた2人は
翔の呼吸が落ち着くのを待って
ゆっくりと立ち上がった
雅「暗いね〜。」
翔「暗いと言うよりは、黒い？」
雅「あっ、そうかも。」
翔「かなりでかい空間だな。」
床･壁･天井
全てが黒一色のその空間は大きく
ﾄﾞｰﾑ状になっていた
静かで少しひんやりとした空気
生き物の気配は
今のところ感じられない
雅「何の為の部屋なんだろう？」
翔「下る通路の先の黒い部屋。なんかいい意味はなさそうだよなぁ。」
雅「もう翔ちゃん、そんな怖い事言わな
翔「雅紀ｽﾄｯﾌﾟ!!」
会話をしながら歩いていた2人
しかし突然翔は雅紀の腕を引っ張って止めた
雅「なに、どしたの？」
翔「……落ちる。」
雅「えっ？」
翔「あと2･3歩先、穴がある。」
真剣な表情でそう呟く翔
その前髪が
僅かに吹く風で揺れている
風の流れて来る先は
明らかに下
その場にしゃがみ込み
床に手をついて伸ばす雅紀
すると床は
50cm程先で突然途切れた
雅「翔ちゃん……。」
翔「部屋が、床と壁の境目もわからないくらい黒いのは、この穴を隠す為だ。気付かず進んでたら、確実に落ちる。」
雅「ありがと。助けてくれて。」
翔「うん。直前で気付けてよかった。」
一瞬走った緊張が解け
雅紀が大きく息を吐く
そして翔も雅紀の隣に座ると
穴の淵に触れた
翔「緩いｶｰﾌﾞ。かなり大きな円形、ってとこか？」
雅「これより先には行かない方がいいね。」
翔「深さは………わかんねぇか。」
雅「何か落としてみる？」
翔「何かある？」
雅「じゃ〜ん。」
そう言って雅紀がﾎﾟｹｯﾄから取り出したのは
どこにでもある安いﾗｲﾀｰだった
翔「………ﾀﾊﾞｺ、やめたんじゃなかったの？」
雅「ちょ、翔ちゃん勘違いしないでよ?!ちゃんとやめてます。もう体壊すのはｺﾞﾒﾝだし。」
翔「そっか。」
雅「松潤が“譲ってもらった”車にあったから、使える時があるかもと思って持って来たんだよ。」
翔「なるほどな。よし、じゃあそれでいこう。」
雅「うん。」
目を見合わせて頷き
雅紀はﾗｲﾀｰを持った腕を伸ばす
そしてゆっくりと手を開いた
雅紀の手を離れたﾗｲﾀｰはあっという間に見えなくなる
しかしいつまで経っても
底にたどり着いた音は
一切聞こえてこなかった
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作者名：風 | 作成日時：2012年10月19日 21時
