素直になれたらよかった【降谷零】

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零を見送る日まで、あと1週間。

今までだって頻繁に会えていたわけでは無いのに、海の向こうに行ってしまうと思うと寂しくなってたまらない。
この調子では、いつでも会いに行ける距離だからこそ遠慮してしまっている今の自分を恨む日が来そうだ。
近頃はそんなことばかり考えて、眠りにつけない日が続いている。

ちらりと時計を見ると、午後11時。今は忙しいだろうか。

電話帳に登録している『零』を見つけて、受話器のマークをタップした。


「もしもし。Aだよ」

「久しぶりだな。元気か？」

「うん、まあまあ。零はどう？」

「俺もそこそこだ。日本で片付けなきゃならない仕事が終わりそうだから、ほっとしてるよ」

そうは言うものの、電話の向こうからはキーを叩く音が絶えず聞こえてくる。

「そっか、お疲れ様。……あの、実はよく眠れなくて……」

こんなことを相談してどうするのかと自分でも思ったけど、眠れない原因を摘出することは出来なくとも、無理矢理入眠する方法くらいは知っているかもしれない。

「なんか悩んでる……よな。あー、そっか」

「自分では割り切れてきたと思ってるんだけどね」

「えーと、今どこでどうしてる？」

「ベッドに座ってるけど……」

「とりあえず横になれ。寝落ちしてもいいから」

私としては不本意だけど、言われた通りにした。
できたよ、と告げると、カタカタとキーボードを叩く音が止まる。

「俺も一旦休憩。」

「邪魔してごめんね……」

「あー、そういうとこだよA。迷惑だったらとっくに切ってるから、何も気にするな」

気にするな、と言われて忘れられるほど器用ではないけれど、少し気持ちが楽になった。

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