素直になれたらよかった【降谷零】

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『090-****-**** R.F
掛ける時は非通知で』

懐かしい文字だ。零が家に書類を持ち帰るようになってから、だんだん字が崩れていくのは気づいていた。もはや解読困難な字に、彼の飾らない姿を見ている気がして嬉しくなった。

果たして陽向はこの字が読めるのだろうか。ちらりと陽向の紙ナプキンを盗み見ると、綺麗な字で『070-****-**** 安室透』と書いてあるのが見えた。他人の筆跡みたいだけれど、紛れもなく零が目の前で書いたものだ。

「電話番号もらえるなんてラッキーだね、A！よくやったじゃん」

「あはは……賭けだったけどね」

「サンドイッチは美味しいし、イケメンに出会えるし、まさかここがエデン……？」

私にとっても、零に会えたことは嬉しかった。
でも聞きたいことが山ほどある。どうしてここで働いているのか、警察官としての仕事と渡米の話はどうなったのか、偽名について、陽向に渡した電話番号は本物なのか。約束を果たせない本当の理由。次から次へと疑問が浮かんでは消えて、頭がパンクしそうだ。

「A、コーヒー冷めるよ？」

「そうだね、そろそろ食べないと……」

サンドイッチを一口食べると、確かにこれが人気な理由がわかった気がした。

「……美味しいね」

「でしょ？」

今は考えるのをやめることにした。私はいつもこうやって、目の前のことから逃げてばかりだ。

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