154.わざと ページ9
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蝉の鳴き声があちらこちらからして
太陽もサンサンと私たちを照らしている。
朝一にかずと二人でお母さんのお墓参りに行き、
雑巾で墓石を磨いたり、新しいお花をいける。
真ん中にお母さんの好きな和菓子を置いて、
線香に火をつけて手を合わせた。
毎日仏壇の前でお話してるから
お墓参りに来たからって特に話すこともない。
”お墓、綺麗になったよ”
あと、なんだろ。
少し考えて、翔さんに
俺の分まで手を合わせ来てと言われたのを思い出した。
”翔さんもね、来たかったみたいだけど
今群馬に行ってて来れないの。
それで、頼まれたからね、翔さんの分まで手を合わせとくね。”
…ぐらいかな。
手を下ろし、目を開けとると
隣のかずはまだ手を合わせたまま。
なんの話をしてるのかな。
じっと見ているとゆっくりと目が開き
色素の薄い茶色い目が横目で私を見た。
和也：「視線感じんだけど」
A：「長いなーって」
合わさっていた手を離し水鉢と柄杓を持って
お母さんに”じゃ、またね”と言って歩くかずの後ろを
ゴミ袋を持って追いかける。
A：「お母さんって、成仏したんでしょう？」
その背中に話しかけると、ピタッと止まって
驚いた顔をして振り返った。
A：「な、に…」
和也：「…信じてたの？」
A：「え…？嘘なの？」
和也：「本当だけど…。
お前、全然お母さんのことも雅紀のことも聞いてこなかったじゃん？
てっきり信じてないのかと思ってた…」
また、前を向いて歩き出したかずを追いかけ、
今度は隣に並んだ。
A：「わざと、聞かなかったんだよ」
和也：「……」
A：「だって、ずるいでしょう？」
和也：「ずるい？」
A：「見えない人が、死んだ人と話をするのは。
誰だって、大切だった人とお話したいもの。」
和也：「そんなの、俺だってずるいじゃん」
水鉢を傾け、残っていた水を流しながらそう言う。
A：「ずるくないよ。
そういう特別な力があるのはきっと、意味があるからだと思うの。
神様が訳あって、かずに力を託したんだよ。」
和也：「雅紀みたいなこと言うね」
A：「ほんと？(笑)
まぁくんに影響されたのかな？」
和也：「先生のおかげじゃね？」
A：「翔さん？」
和也：「そ。前みたいに柔らかくなった。
あの頃のお前みたい。」
かずが遠い目をして言った。
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カレン(プロフ) - せいこさん» 初めまして!気持ちの変化も成長も、櫻井先生のおかげです♪そんなお二人をこれからもよろしくお願いします(^o^)応援ありがとうございます！ (2016年5月3日 11時) (
レス) id: a9e0cca142 (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - キョロちゃんさん» 初めまして、コメントありがとうございます。これからも翔さん素敵だなって言ってもらえるよう頑張ります(*^^*)第5章もよろしくお願いしますね！ (2016年5月3日 11時) (レス) id: a9e0cca142 (このIDを非表示/違反報告)
せいこ(プロフ) - 初めまして。昨日、今日とで一気に読ませて頂きました。ストーリーといい、登場人物皆んな大好きです。主人公の気持ちの変化、成長していく姿が目に見える様です。大好きなお話です。これからも楽しみに待ってますので、頑張って下さい(*^_^*) (2016年5月2日 19時) (レス) id: 9bbea5e87c (このIDを非表示/違反報告)
キョロちゃん(プロフ) - カレンさんはじめまして。いつも楽しみにしています。私は熊本市内に住んでいます、まだまだ余震も続いているんですが唯一の楽しみになっています。やっぱり翔さん素敵ですよね。是非続きも楽しみにしています。 (2016年4月25日 6時) (レス) id: ad68473bef (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - さくさん» それは本当によかったです。これぐらいのことしかできない無能な私ですが、さくさんのように楽しんでいただけているなら、嬉しいです。早く平穏な日々が取り戻せることを祈っています。そして、より被災地の方々が楽しめるようなお話をお届けできたらなと思います。 (2016年4月18日 20時) (レス) id: a9e0cca142 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カレン
| 作成日時：2016年3月17日 9時
