ｼｪｱﾊﾋﾟ ページ38
.
突然拓朗さんから、話があると呼び出された。元々ネガティブ思考な私は、最悪の場合の話しか考えられなくて、約束の時間になるのが怖くて怖くてしょうがなかった。
いつもはこの道を歩くだけで気持ちが高揚して、にやけちゃうぐらいなのに、今日だけは拓朗さんの家に行くのが怖い。一歩一歩、踏み出す足が心做しか重い。門をくぐりたくない。
インターホンの前で硬直して立つ。家にも入れてもらえなかったらどうしよう。玄関先での別れ話なんて、ドラマの中の話だけだと思っていたけど、こういう状況になると、むしろそっちの展開しか思いつかない。
『…だめだ…押せない…』
押してしまえば全てが変わってしまうような気がして、インターホンを押せない。突然呼び出されて、いい話なわけがないじゃん。ポジティブ思考な人を見習って、いい話かもと思おうとしたけど、何も思いつかなかった。生粋のネガティブ人間すぎて嫌になってしまう。
何分ほど硬直していたのか分からないけど、指を伸ばして、その指をしまって、ボタンに手をかけて、その手をひっこめてを延々と繰り返していた。
不意に、目の前のドアがガチャ、という鈍い音と共に開いた。その瞬間、拓朗さんと目が合う。私の姿を見ると軽く目を見開いた。
｢え、着いてるやん。入りなよ。
インターホン壊れとった？｣
『…入っていいんですか？』
｢いつも入ってるのに今更どうしたの。
はい、どうぞ、いらっしゃい。｣
柔らかく微笑む拓朗さんに、思わず安堵の息が漏れる。この対応を見る限り、とりあえず最悪の場合はまぬがれたらしい。
｢はい、じゃあそっち座って。｣
ダイニングテーブルに、向かいあわせで座る。
前言撤回。
最悪の場合かもしれない。こんなにも改まって話すことと言えば…。
｢なんで、呼び出されたと思う？｣
何故か嬉しそうに聞いてくる拓朗さん。なんて残酷な。私に…別れを切り出せというのか。
『…私、拓朗さんのことまだ好きです…』
｢んっ？｣
『捨てないでください…』
思わず顔を机につけて突っ伏してしまう。こんな終わり方嫌に決まっているじゃない！
｢待って待って、
そんなわけないやん、別れないよ、俺たち別れないからね？｣
『だって、こんな改まって呼びだされて、話すことと言えばそれしかないじゃないですかぁ…』
そう言うと、拓朗さんは少し背筋を伸ばして目を合わせてきた。
｢じゃあ、ネガティブなAさんにはストレートに言うからね？｣
『………うん』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぷち。(プロフ) - 七海さん» 実は最後までくっつけようかどうか迷ってたんです…笑でも作者がハッピーエンド大好きなので！笑読んでくださりありがとうございました！これからもよろしくお願いします！ (2019年11月21日 16時) (
レス) id: 996a593dea (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - やっとくっついたー。 (2019年11月20日 22時) (レス) id: b66e2f7b3d (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - 名無しさん» 私も朝苦手です、起きれません…(そうじゃない)応援ありがとうございます！これからも頑張ります！！ (2019年11月19日 19時) (レス) id: c749ad5c5e (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続きが気になって朝も起きれません。応援してます！！ (2019年11月19日 18時) (レス) id: cbbd2e7772 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - Lemon5225さん» ありがとうございます(TT)もう1つの方長かったのに、読んでくださったんですね、嬉しい限りです(TT)これからも頑張ります！よろしくお願いします！ (2019年11月18日 8時) (レス) id: b615b8b6d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷち。 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年11月16日 20時
