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北の鉄腕
百戦錬磨
球界屈指のサウスポー
どんなかっこいい言葉を並べられたって、私からしたらただの我が儘強引でも寂しがり屋というめんどくさい彼氏でしかないのだ。
宮西尚生。
彼はめんどくさい。
お誘いを断ればすぐ拗ねるし、何にもないのに電話をしてくる時もある。
三歳年下の私も仕事で忙しいのだ。そこをもう少し分かってもらいたい。
試合の無い日も、できるだけ時間はつくって会えるようにしている。私だって会いたいのだから。
そして今日は、その試合の無い日で。
夜にイタリアン食べに行こうって、お誘いをいただいた。彼にしてはオシャレなチョイスである。
相変わらず、夜に会えるというのに朝から電話をかけてくる。昼休みにLINEで｢また夜たくさん話そう｣って送ったら、猫がしょんぼりしたスタンプが返ってきた。彼のお気に入りらしい。
そして、待ちに待ってた夜。
いつもは薄い化粧も、今日はちょっとだけ凝っている。スカートもヒールのついた可愛い靴も、彼に会う時しか履かない。
私だって、会えるのをずっと楽しみにしてる。
仕事だって、できるだけ早く切り上げてる。
でも彼は。
｢遅い。｣
私の頑張りをたった三文字で潰す。
こんな時だけ来るの早いんだから！！！
｢け、結構頑張ったよ今日！？尚生さんが来るの早すぎ！｣
｢あぁ？まだまだ遅いわ｣
｢６時半って言ったよね？今25分だよ！？｣
｢四の五の言うな、時間もったいない、行くぞ｣
｢うあっ、ちょ...｣
ぐいっ、と私の手首を掴んで強引に引っ張って、彼は早歩きでレストランに向かっている。
｢ちょ、速い速い！！！もうちょいゆっくり...！｣
｢なんやもう、ヒールなんか危ないやん、履いてくんなや｣
ひ ど い
｢い、一応オシャレなんだからね！｣
｢分かっとるわ、スカートもそうやろ、もうちょい動きやすいの着てこいや｣
｢分かりましたよどうせ似合ってもないですし次からジャージで来ますよ！！！｣
｢ジャージて｣
歩くスピードを少しだけ緩めて、彼は笑った。
｢私は本気だよ｣
｢んー...てか誰も似合ってないとか言ってないやん｣
｢え｣
手首を掴んでいた手を下ろして、私の手を握って、彼は言った。
｢まぁジャージも似合って可愛いやろけどさ｣
｢.........｣
反則である
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作者名：やねのうえ | 作成日時：2017年5月23日 19時
