あんたのハートを射止めてやるから【rtrt】 (ページ41)

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赤花散らせ誰の手を取って＊ページ41

下を見ればホワイトグレー。私の服はシースルーに刺繍が入った真っ赤なワンピース。少しだけ高さのある赤いヒール。何故か目の間にあるの鏡を見れば、真っ赤な口紅が塗られていて、私じゃない別人にしか見えなかった。

鏡越しに見えるキヨ、いつの間に入って来たのか、何処からともなく音楽が流れて身体が勝手に踊りだす。キヨの手を取って一緒に、よくダンスが上手な人たちが踊るみたな、アイドルたちが踊るみたいな、そんなダンス。キヨは赤と黒がいいバランスなジャケットに黒いスキニー。普段のキヨでは考えられない格好に心が少し跳ねてしまう。

「A」

名前を呼ばれて腰を引かれて、キヨの顔が近付く、私がそれを人差し指で止めて離れようとすれば後ろから抱きしめられてしまう。耳元で「俺の事ちゃんと見てよ」なんて。キヨの手がお腹と胸元に来て耳を甘噛されてそのまま首筋にキスが降る。

あぁそうだ。舞台もこんな話だったよね。本当に私たちの事見てたのって位、私とキヨとレトさんの関係の話だったんだよ。だから涙が出た。今も出てる。擽ったいから、気持ちいいからなのか。解らない。

好きの気持ちを通わせられないのは何とも表現し難い、胸の締め付けが痛い事位しか表現出来ない貧相な思考。

キヨの方を向けばまた顔を近づけられるけれど、離されてしまった。

「Aちゃんはこっち」

「レトさん、Aは俺のなんだけど」

「無理。Aちゃんはもう俺が射止めてる」

「邪魔すんな」

「変わらへんよ、キヨくんはAちゃんに愛されへん」

レトさんが手を上げた瞬間空間が止まった。私もキヨも動く事が出来ない。でも目で動きは追える。ポケットから赤いリップを出してキヨの唇に塗る。指を鳴らせば時間は動いて、リップを折ってレトさんは自分の手で握り潰す。

「やめろ！」

キヨの声がと多くの方で聞こえて、レトさんが真っ赤な手で私の頬を持ってキスを一つ。その瞬間キヨの姿は消えて代わりに赤いバラの花びらが舞っていて、その光景が酷く美しくて、私は泣いてしまった。レトさんに指で唇をなぞられる。

「Aちゃんは俺の事も愛せへんよ」

その言葉にレトさんを突き飛ばせばレトさんの姿も花びらになって、この場所には私しかいなくて、空からも赤い花びらが降ってきて、私は何かを叫んで泣いていた。

……そこで知らない天井を見て夢だったんだと色んな意味で安心した。隣で寝ているのはキヨさんだけれども、ここは一体何処なんだ。