75映えとは？ ページ28
これはデートや。紛れも無いデート。手繋いでる事についてAちゃんは何も言ってこん。それどころかあっちに行きたい、こっちに行きたい、って俺の手を引いて連れ回す。写真撮りたいってスマホ出した時位。その後も何食わぬ顔で自分から手繋いでくるんやもん。何なんこの子。柄にも無く浮ついた事で喜んでまう俺がおる。
｢レトさんレトさん｣
｢どしたん？｣
｢ここの水族館はどうやらクラゲを今推してるらしい、ほら、またクラゲブース｣
｢ほんまやね｣
｢天国ーーー！！｣
さっきもあったクラゲの水槽より、今度のは今流行りで言う所の映えって言うんやろか。綺麗なライトに幻想的なクラゲ。……それに反する様に何故かある撮影スポット。
そこにはカップルとか親子連れとか女の子同士で写真をスタッフのお姉さんに撮ってもろてる人ら。あんまり人おらんのは平日やからやろうか。
Aちゃんも何あれって気になってるみたいやけど、それ以外は特に何も言ってこんかったからスルーしようと思っててんけど、バッチリ、前の人ら撮り終わったお姉さんと目があってまう。
｢よろしければお撮りしますよ｣
ニッコリ。お姉さんに微笑まれたら俺もAちゃんも断れへん性格が出てしもて、お願いします……って俺のスマホ渡して謎の映えブースに立たされてしまう。正直、恥ずかしすぎる。
｢撮りますよー！あ、彼氏さんもっと彼女さんにくっついてください！｣
｢かっ……｣
｢彼女さんも寄り添って！｣
｢かっ……｣
アトラクションのお姉さんでもやってたんやろうかこの人って位グイグイ言うてくるから、Aちゃんの方見てどないしよって言うたら吹っ切りましょう！って、俺の手を恋人繋ぎして……。
｢ハイポーズ！わぁ、お二人とってもかっこよく撮れましたよ！｣
何故かプリティーでキュアュアな幼女先輩御用達アニメの初代のポーズを取らされてしまった。恥ずかしいの百乗。吹っ切りましょうってそう言うん期待してないねん俺。
｢こちら記念のノベルティーです。この後も素敵なお時間をお過ごし下さい｣
｢やった！クラゲのシール！｣
結果的にAちゃん喜んどるし良かったと思おう。ホログラム仕様のクラゲモチーフのステッカーではしゃぐんやもん。
三十分後、キヨくんからグループチャットに俺らと同じ映えスポットに四人で戦隊モノのポーズで撮られた写真が送られて来てんけど、ほんまみんな何なん。映えって何なん。
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作者名：なかもと | 作成日時：2019年10月10日 23時
