66ポーカーフェイスは破れない ページ18
Aとキヨさん中々戻って来ないなって、閉ざされたカーテンをチラッと覗けば、熱い抱擁の最中で私ってばどうしてこう何時もタイミングがいい時に出会すのだろうか。
｢二人ともどんな感じなん？｣
｢熱い話合い中っぽいです。多分もうすぐ戻ってくるかと｣
｢キヨとAの友情もまた深いもんな｣
これは私の憶測でしかない。けれど、あの感じを見るに、キヨさんはAの事が好きだと思う。友情ではなく、恋愛感情的な意味で。
ただ、これも私の憶測でしかないけれど。レトルトさんもAの事が好きなんだと思う。じゃないと公園であんな事はしていないだろう。レトルトさんがめちゃくちゃ遊び人だったら解んないけど、何となく、レトルトさんはそんな人には見えないけど。
｢……男女の友情って成立すると思いますか｣
｢一概には言えねぇだろうな｣
意外にも牛沢さんがスマホを弄りながら答えてくれる。牛沢さんは、キヨとAの友達として好き！からの本当に一線は越える事がなかった関係を間近で見ていた人だから、成立するんじゃねって言いそうだったのに。
｢どっちかがコイツを誰にも盗られたくないって思ったり、何でもない時真っ先に該当する奴思い出したりしたらもうそれは恋だと俺は思うけど｣
｢それは執着って意味ではなくですか？｣
｢あれ喜びそう、これ好きって言ってたとかさ。男は友達とは言え何とも思ってない女にそんな事思わないと思うよ。俺はね｣
｢でもうっしーAちゃんの好きなもんとかめっちゃ知ってるくない？｣
｢何年アイツの兄ちゃんやってると思ってんの？説明し辛いけどさ、そう言う事じゃないんだよ｣
何だろう、この何とも言えない微妙な空気感は。誰も怒ってる人間は居ない。険悪な感じでもない、けれど、なんて言うか、三人で探り合いしてるこの感じ。
私はこの人たちがどう言う思いでAと仲良くしてるのかは知らない。私が知っているのはAとユウトの関係性位だから。表面上の話はAから聞いていてもそれはAの自己解釈にすぎないし。
｢……お二人共何か腹の中に飼ってますね｣
｢どうやろね｣
｢さっき食った赤飯なら今は飼ってるけど｣
上手くはぐらかす感じ、年上の余裕ってやつなのだろうか。牛沢さんもレトルトさんも双方に聞きたいことは有りそうな目はしてる。ただ私はこの人達の関係性には踏み込めない事は解った。なんかこう上手く話が纏まったら誰か私に話して下さい。現場からは以上です。
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作者名：なかもと | 作成日時：2019年10月10日 23時
