50それぞれの想いの形 ページ2
ゲームしてたら予定より早く着いたキヨくんからの着信。部屋の前に居るから開けてやって。
｢思てたより早かったやん｣
｢当たり前だろ、打ち上げ乾杯だけして直行してきたわ。んでAは！？｣
｢寝とるよ｣
コンビニの大きめな袋を持ったままキヨくんはAちゃんに近寄る。頭撫でて生きててよかったって。何やろな、Aちゃんって、病んでる人とかではないように見えるけど、目離したら消えてまいそうやねんな。儚いっていうんかもしれんけど。めっちゃ華奢で特別可愛くて誰もがほっとかへん、そんな感じな人やないけど。明るくていっつも笑ってて動画内ではほんまに元気な子に見える、儚さとは無縁の人。やけど、実際は普通の何処にでもおる女の子と変わらん。
｢ユウトから連絡あったりした？｣
｢なんも無いしここにも来てへん｣
｢あっそう｣
コンビニの袋持って歩くキヨくんの後ろ着いてけば、冷蔵庫に無造作に杏仁豆腐やらプリンやらゼリーやらケーキやら。兎に角食べ物。飲み物。ポイポイ入れてて、とても一人で食べられる量やないそれらを入れて、何処か怒気を感じる気配はある。
｢Aに言われない限りユウトを潰す事は俺には出来ねぇし、アイツは多分それも望まない｣
｢せやろな。優しさの塊みたいな人やもん｣
｢それがもう全部ムカつく｣
｢キヨくんの気持ちもわかるで｣
｢わかるならよ！……わかるなら、どうにか、どうにか出来るんじゃねぇの｣
｢あんまり大きい声出すとAちゃん起きるし。それはキヨくんのエゴ｣
多分冷たい言い方をしてしまったと思う。せやけど、どうにかしてあげたいし、許されるからユウトくん一発位ぶん殴りたいし。でも、それは俺らには正直出来ひんねん。部外者でしかないから。
誰か怒ってると冷静になれる自分はおるけど、キヨくんみたいな人がおらんかったら俺もキヨくんみたいにはなってたよ。
｢何でそんな落ち着いてられんの｣
｢俺らが落ち着いてやなAちゃんが余計困るやん。話聞いてあげて、どうしたいか聞いて、それから行動する。見守るのも一つの愛、やと、俺は思うから｣
そらまあキヨくんよりも生きてる年数はほんの少しだけ長いから。そうならなあかん時かてあるんやで。ほんまに困った時に手を差し伸べられる準備を俺らはせないかん。
｢……配信見るの｣
｢当たり前やん｣
配信者のリンクを開けば挨拶が始まってた。あと十分位やろ。いざとなったら、俺らが守ったらなあかんねんから。
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作者名：なかもと | 作成日時：2019年10月10日 23時
