あんたのハートを射止めてやんよ【rtrt】

37年長者の立場的中立 ページ38

散々茶化してたけど、キヨの本音を聞いたのは初めて。忙しなく指を動かして俺の方は見ないけど、それでも一言一言しっかり言葉を紡ぐキヨの顔は、この選択が正しいのか解らないとか、これでいいんだと自分に言い聞かせるとか、そんな感じのもので、いつもふざけてる様なものでは無いように見える。

若いなぁ、青臭いなぁ、いいなぁって思ってしまう俺は正真正銘おじさんで。不器用な男の子って言葉が今のキヨには似合う。


「どうせならさ、俺Aに幸せになって貰いたいんだわ。俺が絶対に幸せにしてやる！って簡単には言えないし、正直責任が持てるとは思わない。だからレトさんに押し付けてるだけなんじゃないかって思うんだけど」

「そんな事ないと思うよ。キヨがAちゃんの事を思って考えた結果でしょ」

「そうだけど……そうだけどさぁ……俺もレトさんに憧れてて、だからレトさんからAを任せてもいいかなって思ったけどやっぱ嫌なもんは嫌なんだよ」


憶測だけど、キヨは彼氏の居ない誰のものにもなっていないAちゃんと今の関係を緩やかに続けて行きたいんだろうな。それは自分の我儘だって事も解ってるし、でもでもだって。それしか今は言えないんだよな。

それなりの経験をしてきてわかる事と言えば、所謂大人の男女ってものは切っ掛けさえあれば付き合うって事はすぐに出来るんだよ。特に俺たちみたいな学生や一般社会人っていうコミュニティに属していない立場の人間なら出会いの場も限られてくるし。ガツガツ婚活やら何やらしてたら話は別だけど、そう言う訳でもないし。


「Aちゃんに気持ち伝えなくていいの」

「まだわかんねぇ」

「本当にレトさんがAちゃんと付き合ってもキヨは後悔しない？」

「後悔はする、と思う。ただ、そう、今日さ、レトさんAの事ギュッてしそうで止めた所見た感じ、レトさんも良いなって思ってんだろうなとは思うから、このまま上手くいってもほしい」


俺がキヨ位の年齢で同じ事があったら、多分俺は自分の事しか考えないで行動してたと思う。Aちゃんの事を考えてるキヨは、恋って言うより愛なんじゃないかな。なんて。

それからキヨはこの話はおしまいって、無理矢理空気を変える話題を振ってくるから、俺も空気を読んでおちゃらけおじさんになるしかなかったけど。

どうかキヨの後悔しない選択を選んで貰いたい所ではある。

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