あんたのハートを射止めてやんよ【rtrt】

34お兄さんだけに ページ35

俺はキヨと違って本当の意味でAの事が好きな訳では無い。妹としてなら大好きだけど。冗談でちょっと大人の色気のある声出して迫っても、身体を引かれたって事はとっさだったとしたもそういうつもりはないって証明された。それはある意味良かった。


「馬鹿野郎本気にすんなよ」

「だってそんな事言わないじゃん」

「そんな気ねぇから普段から言わないの」


Aとレトルトが居なくなってから知らない女が俺たちの席に来た。甘ったるい声でお邪魔してもいいですかぁって言い訳ねぇよ。キヨは断固無視決め込むし普段なら喜びそうなガッチさんもトイレって席立つし俺しか対応出来ねぇじゃん。

邪魔なんで帰って下さいって正直に話したらもしかして牛沢さん！？とか白々しい事を抜かす。でも直ぐにガッチさんが店員さんを連れてきて女たちをどっかやってたけど。どうでもいいからあんま覚えてないし。ただ腹は立った。あの女たちがAを貶していい理由はないから。


「で、お前結局どっちなの」

「何が」

「レトルトとキヨ」

「何が」

「え？どっちか好きでしょ？ユウトより」


沈黙は肯定と見なしますよお兄さんは。正直Aももうユウトよりレトルトかキヨのどっちかに行こうとしてるだろ。よく言うじゃん、女が彼氏と別れてもすぐ彼氏出来るって。それって平行でキープいるからだろ。違うの？

俺も真っ当な人間じゃないし、当事者じゃないし、ユウト嫌いだから別にいいじゃんって思っちまうけど。それが世間一般的に通じる事ではないかもしれないが。


「……黙っててくれる？」

「当たり前」

「私さ、本当はさ、レトさんが初恋の人なんだよ」

「ヒュー！おじさん恋バナ大好き！」

「おじさん五月蝿い！……でもさ、今でこそ半顔出ししてるけど。ニコニコの時って声だけだったじゃん、」

「グラサンにマスクだったもんな」

「そんな人に恋するってどうかしてんじゃん、顔も何も解らない人に」

「あーね」

「だから恋を憧れにして、私はただレトさんと同じ土俵に立ちたくて、同じ一線で活躍したくて、がむしゃらにやってきたんだかど。だから今こんな状況に戸惑ってる。気移りが激しすぎるしそんなの視聴者にケジメもつかないじゃん」

「そうかな」


ケジメも何も。Aがしたいようにすればいいだけの話だろ。Aの人生はAのもんだし。折角色々本当の意味で叶いそうな自分の夢、自分でぶち壊そうとしてるだけじゃん。

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