あんたのハートを射止めてやんよ【rtrt】

22人間って単純だからさ ページ23

これは私の身の上話ですと前置き。多分レトルトさんはユウトの事をよく知らない。当たり障りなくキヨたちから聞いてるかもしれないけれど、根っこの部分は聞いてないと思う。


「ユウトの話なんですけどね」

「そうや。話遮ってごめんやねんけど活動休止するんやろ、大丈夫？」


その一言が私の感情なのか思考なのかはたまた心なのか。兎に角内部分に刺さって目元が思わず歪む。大丈夫ですの一言が上ずってしまう。

大丈夫な訳がない。


「大丈夫ですよ、はい、だいじょうぶです……」

「大丈夫ちゃうやん、大丈夫やったらそんな顔せえへんやろ」


目線から顔、そのまま下へ向けようとすればレトルトさんに止められる。優しく、しかし真実を話せと言わんばかりの意志を持って、レトルトさんの手は私の両頬を支える。真っ直ぐ見つめられる目線は、とても嘘をつけない。


「大丈夫……じゃ、ないです、私はもうわからないです」


活動者、ましてや憧れであり私にとっての神であるレトルトさんに弱音は吐きたくなかった。しかし誰でもいいから話を聞いて欲しい事には変わりない。本当に、キヨでもうっしーでもガッチさんでもなな子でも、兎に角誰でもいいから本心は話を聞いて欲しかった。

言えないのは私のちっぽけな強がりでしかない。


「何が辛いん？」

「今、この、ユウトとちゃんと話せないこと」


レトルトさんは責めるでもなく、ただ優しく聞いてくれる。辛いのはユウトとちゃんと話せないこと、今の現状、二人のチャンネルの事、現実的に考えてユウトとの未来が曇ってきたこと。好きだけど、好きだけではどうにも出来ない事。

もしかしたらこのままでは別れてしまう事への恐怖。

そんな中での決まった私にとっては願ってもなかったレトルトさんとのイベントに正直舞い上がりすぎていて、感情はぐちゃぐちゃで、何からどう話せばいいのかわからない。それも辛い。


「泣かせたい訳やなかったのに、ごめんな」


話してくれてありがとう。そう返してくれるレトルトさんは両頬から手を離し、頭をそっと撫でてくれる。これは、レトルトさんのことを好きになってしまう魔の行為。

これをなんの気無しにしているのであれば、レトルトさんは飛んだプレイボーイだわ。

……何だろうな、あわよくば、あわよくばレトルトさんとどうにかなりたいとか思ってしまっている時点で私はユウトの事を本気で好きではないのかもしれない。

私はガチ恋勢では無かった筈なのに。自己嫌悪だわ。

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