・(HD) ページ17
｢クン、花束を持っててくれ｣
｢はいはい、分かりましたよ。頑張ってください｣
私は緊張しながら彼女の部屋の扉を叩く。
｢どうぞ｣
扉が開くと、窓際に佇む彼女の姿があった。
彼女の近くに行くと私を見て笑うから、また私が無表情だったか何かおかしい所でもあったかと気にはなったが、彼女の笑った顔を見たらなんでも良いかと思った。
気分はどうかと問うと、素直に良いとは言えないと言う。
確かに不健康とまではいかないが、ここに来た時より少しだけやつれたように見える。食事もまともに取れていなかったのだろうか…悩んでいないで彼女の為にもっと早く来るべきだったと後悔した。
何をしていたのかと聞いたら窓際に置かれた椅子に座って庭とさくらの木を見ていたと言う。
｢さくらを随分気に入ってくださったのですね｣
｢はい、でもこんなに早く散ってしまうなんて寂しいですね｣
とても寂しげな表情で窓の外に視線をやる彼女にどこか冷たさを感じて、初めて会った時思った、少しでも彼女が過ごしやすいようにという気持ちが強くなった。
もっと他のものに、この城や国にある色々なものに興味関心を持ってもらえれば…
そして私は一度部屋を出て花束を受け取ると後ろに隠した。
彼女の前まで行き、そこで初めて彼女に向けて花束を出すと私が想像していたよりも彼女は落ち着いた反応でこの作戦は失敗だったんじゃないかと思った。
だが、その後すぐ花束を受け取った彼女は｢ありがとうございます、嬉しいです｣と言い、何とも温かい表情を浮かべニコニコと笑った。
出会ったばかりの女性をここまで堪らなく愛おしいと思う気持ちをどうしたら良いか、誰か教えて欲しい。
外に出たいと思って貰えるよう庭の話しやカモミールの話しをしてみた。
彼女は興味を持ってくれたようで、今度行ってみると言う。正直部屋に篭もりきりも身体に良くないと思うのでそう決断してくれた事は嬉しい。
私はそこまで話し、これ以上長居するのも彼女の負担になるかと思ったので公務に戻る事にした。
｢渡せましたね｣
｢あぁ、ありがとう｣
どうなるかと思ったが、とりあえず外に出てみると言って頂けた事と彼女の顔が久しぶりに見れたので良かった。
ただもう1つ、一緒に見て回りませんか？と言いたかったけれど、急に誘われても困るだろうし、彼女が興味を持ったのはあの庭だ。
それはまた今度、頃合いを見てお誘いしてみよう。
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揺蕩(プロフ) - ao_314さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです☺︎かなり🐢更新ですが最後まで頑張りますので引き続きお楽しみ頂けますと幸いです\( ˆoˆ )/ (1月2日 14時) (
レス) id: 09fdb0806d (このIDを非表示/違反報告)
ao_314(プロフ) - ヘンドリーの作品があまりないのでめちゃめちゃ嬉しいです！ありがとうございます‼︎もう、最初から泣きそうでした😭 (12月25日 2時) (レス) id: 646af75665 (このIDを非表示/違反報告)
揚羽(プロフ) - 揺蕩さん» うわぁ、ありがとうございます…！面白いと言って頂けて良かったです。distinyのこれからのお話も楽しみにしてます☻ (12月2日 9時) (レス) id: dc7b6890ce (このIDを非表示/違反報告)
揺蕩(プロフ) - 揚羽さん» メンバー内で鎖国してます。を拝見した事があります！お話のまとめ方というか進行の仕方がとても面白くて好きです( ˆ ˆ )続きも気になってます〜！ (11月29日 9時) (レス) id: 09fdb0806d (このIDを非表示/違反報告)
揚羽(プロフ) - 揺蕩さん» あんな拙い作品を読んでくださっていたとは…！ちなみに差し支えなければ、どの作品を…？ (11月27日 19時) (レス) id: dc7b6890ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：揺蕩 | 作成日時：2023年11月20日 13時
