君がいる世界 ページ43
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「 ッ―――Aちゃーん！！！！ 」
「 うわ、ちょ、顔キモいんでそれ以上近づかないでください 」
「 なんで！！！！ 」
以前と変わらぬ毒のある言葉。
君が俺にだけ見せてくれる一面だと知ってからはそれさえも愛おしくて、特に今は、君が目の前に居るというだけで世界一の幸せ者だと言い切れるほど嬉しい。
顔をしかめるけれど本気では拒絶してこないAちゃんを、包み込むように抱き締める。
またこうして抱き締めることが出来て、嬉しい。死ぬほど嬉しい。
けど、実はちょっと怒ってたりもする。
だって河村さんがあんな助言を寄越したってことは、俺以外はAちゃんが今日面接に来ること知ってたんでしょ。また俺にだけ伝えなかったんでしょ。
そんなの、嫉妬するに決まってんじゃん。
ほんとは。ほんとは。俺の方がこうして君を喜ばせたかったのに。
「 ……また俺に言わなかった 」
「 だって伊沢さん、言ったら迎えに来るでしょ 」
「 そりゃ彼氏なんだから行くだろ！！ 」
「 ……まぁ、まだ付き合おうとは言われてないですけどね 」
「 え！もしかして付き合ってると思ってたの俺だけ？！？なら付き合おう！今すぐ付き合おう！ついでに婚約もしちゃう？！？指輪要る？？！？ 」
「 嘘ですって。婚約はまだ遠慮しときます 」
ぎゃんぎゃん喚く俺を宥めるように、彼女の腕が背中に回ってくる。
まだまだ遠慮している感じが残る、おどおどとした手つき。添えられただけのようなそれに自分の右手を添えてあげると、ゆっくりと指先が俺のワイシャツを掴んだ。
「 ……今度は 」
「 うん？ 」
「 今度は、私から向かいたかったんです。いつも迎えに来てもらってばかりだったから 」
あぁ、やっぱり好きだ。そんなの気にしなくても良いのに、俺が勝手にしてたことなのに、ちゃんと返そうとしてくれてる彼女が。好きで好きで、たまらなく大好きで。
きっとどんな世界線でも、俺は君のその優しさに……君に、惚れていたと思うんだ。
「 A、好きだよ。愛してる 」
だからもうあんな遠くに行かないで。
俺が迎えに行ける範囲に居て。
ふざけた料金なんて要らないから。
いつだって君の魅力を叫ぶから。
俺だけを見てて、俺を呼んで。
俺はいつだって、君の温もりを近くで感じてたいんだから―――。
□
【 Epilogue -ｴﾋﾟﾛｰｸﾞ- 】→←迎えは要らない
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年1月6日 19時
