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君の居ない一年間 ページ41









 ―――








 ――――――









「 ―――伊沢、伊沢。いつまで寝てんの 」








 その日はいつもより肌寒い日だった。

 俺を幸せな夢から引きずり起こすのはいつだってスマホのアラームか会社の人間で。
 今日も例に漏れず、瞼を押し上げた先に居るのは呆れ顔の福良さんだった。
 次に視線を移したのは、彼の背後に広がる仮眠室の天井。いつまで、いつまで……俺は一体どれだけの時間を睡眠に使っていたのだろう。









「 ……今何時っすか 」
「 もう二時回ってるけど 」









 彼の言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、寝過ぎたでも仕事のことでもなく、まず昼食を食いそびれたこと。
 「 寝過ぎると生活リズム崩れるよ 」まるでどこぞの母親のようなことを言う福良さんに、俺はやっと体を起こした。

 Aちゃんが留学に行ってもう一年。
 その間、電話をしたりメールをしていたお陰で大分寂しさは軽減されていたけど、それでも、寂しいのは事実だ。


 だって、前まであんなに傍に居たんだぞ。
 まして、それが好きな子となれば余計寂しいに決まってる。








「 はぁぁぁ 」
「 ほら、ため息ついてないで。早くしないと来るよ 」
「 ……え、誰がですか 」
「 はぁ?忘れてたの?今日新入社員の面接でしょ 」








 面接。その言葉を聞いて思い出される、今日の朝のこと。
 確か福良さんが「 今日面接だから覚えといてよ 」と言っていたような。

 ……忘れてた。

 だがその事を素直に口にすることはできそうにない。言ったら最後。福良さんの怒りMAXの笑顔を向けられる。
 最悪長時間お説教コース。それだけはなんとしてでも回避しなければ。









「 いや、勿論覚えてますけど 」
「 ほんとに? 」
「 ほんとほんと。ベリーベリーほんと 」
「 だからそれ全く信憑性上がってないってば 」








 呆れながら先に部屋を出ていく福良さんを追いかけて、俺もいそいそと仮眠室を出る。
 そして面接用のスーツに着替え、仮眠していた分を取り返すように、時間になるまで仕事に専念することにした。








「 伊沢、一人目来たよ 」
「 え、もう?! 」
「 先に会議室に通しといたからあとよろしく 」








 三十分後。予定よりもまだ大分余裕がある時間、通りがかった河村さんにそう伝えられる。
 ヤバイな、まだ待たせてしまいそう。先に挨拶だけでもしておこうか。









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作者名:朝田 | 作成日時:2021年1月6日 19時

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