大事件クラッシャー ページ34
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私にも一応指示は与えられたが、あまりにもやることが少なく、直ぐにそのタスクもこなしてしまう。
とは言っても、あのプロの方はもう仕事が無いと言うし、他の方も大分今の状態で回っているようだった。
寧ろ私が入ってしまう方が歯車が噛み合わなくなると言うか、私自身が蛇足そのものとなっている。
こういう時は無難に端の方で大人しくしているのが得策だ。私の勘がそう言っている。
「 伊沢さん、ここの配置これで大丈夫ですか? 」
「 あ、はい。オッケーです。引き続きよろしくお願いします! 」
「 伊沢さん、ここのセットチェンジなんですけど…… 」
「 あー……ならここで僕動きますよ。その方が時間短縮ですし 」
「 伊沢さん!ちょっとこっち良いですか! 」
「 はい!はい!今行きます! 」
壁際でボーッと案山子の如く突っ立っている私とは対照的な彼の姿が目に痛い。眩しすぎて痛い。
昔も今も変わらず自分から率先して動いているという彼のことだから、動いていない方が落ち着かないのだろうけど、だとしたって凄い。
その分プライベートは蔑ろにしがちなのはあれだけど、逆に、彼も人間なんだなと思う。なにも知らなかった頃は同じ場所で仕事をするってなったときはびびり倒してたな。懐かしい。
することもなく彼の働きっぷりを目に焼き付ける時間。その時間に突如として終止符を打ったのは、意外にもずっと見ていた伊沢さんだった。
「 ―――危ないッ!!! 」
彼の言葉が早いか、私の頭上に影が差すのが早いか。
咄嗟に背後を振り返ると、背後に立て掛けてあった脚立が現在進行形で私の上に落ちてきている所だった。
これはどう頑張ったって避けられない。
無駄に足掻いて事を大きくするよりは、これ以上迷惑をかけるよりは、怪我は最小である方が良い。
「 ―――い”……ッ! 」
ガシャンガシャンと響くけたたましい音と共に、腕に走る鈍い痛み。
反射的に頭を庇って身を丸めたことが功を奏したのか、目立った怪我は腕の打撲のみだったようだ。これなら最悪病院に行かなくてもなんとかなるかもしれない。
正直泣きそうなくらいには痛い腕をかばうようにして、駆け寄ってきてくださった方々に「 私は大丈夫です 」と笑みを作る。
このまま、ちょっとした出来事くらいで終われば、なんの問題もない。
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作者名:朝田 | 作成日時:2021年1月6日 19時