ついていた勝敗 ページ18
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「 私ですよ、貴方の制服捨てたの 」
言った。結局自分でカミングアウトしてしまった。
だって可笑しいだろう。こっちはあいつの困ってる姿が見たかったというのに、たかが制服を捨てられただけで、収入源であるバイトまで辞めるなんて。
それとも私をこうして誘き出すための罠か？本当の雫石Aという女は、そんなにも計算高い女だったのか？そうやってあの男も落としたのか？
せめてそういう腹黒い一面が見れたなら、私だって救われた。所詮良い子ぶってる女の中身はそんなもんだって、私と一緒なんだって、心の中で嘲笑うことだってできた。
なのに、どうして。どうしてこの女は。
「 そっか。ありがとう、名乗り出てくれて 」
「 は？ 」
「 辞める前には、迷惑かけてた人に謝りたいなって思ってたから。今までごめんね、白石さん 」
こんなにも、非の打ち所が無いんだ。
その返答はどう考えても違うじゃないか。今のこの場面は、「 どうして白石さんが…… 」って言って絶望したり、「 なんでそんなことすんの！ 」ってキレるところじゃないか。
加害者に対して被害者が謝るなんて、そんな展開あって良いわけがない。
あぁダメだ。知れば知るほど、この人のことが憎くて仕方ない。
「 ……なんなの、あんた 」
「 うん、ごめんね。白石さん 」
「 っそうじゃねーよ！なんであんたが謝ってんの？！なんで責めないの？！最低だって、こんなの罵る場面じゃん！それなのに辞めるってなに？！それで加害者を気遣ってるつもりなの？！？善人ぶってるつもり？！あぁもうほんと、あんたって気持ち悪い……！ 」
今までの苛立ちをぶちまけて、荒れた呼吸を整える。
雫石Aは黙ったまま私を見つめている。そのまま、私に幻滅すれば良い。心内を吐き出した私にはもう、必死になって取り繕わなきゃいけないことなんてなにもない。
「 白石さん 」
「 ……なに 」
「 多分、そっちのキャラの方が絶対良い 」
「 は？ 」
この女はこの期に及んでなにを言っているんだ。
こんな状況でまで私のキャラクター性について？馬鹿なの、こいつ。
「 今の白石さん、すごいとっつきやすい。更に人気出そう 」
最後の最後までケロッとしている彼女の前で、実感する。
あぁなるほど、分かった。
最初からこの勝負、私に勝ち目なんて無かったんだ。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年1月6日 19時
