第三者はお見通し ページ12
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どうしてこうも、彼らは奥手なのだろう。
好きな人の為に頬を殴られた伊沢に、そんな彼を心から心配そうに見つめるしずくさん。
どこからどう見たって両思いなのに、あれだけグイグイ行く伊沢ですら、肝心なときは過剰なくらいに慎重だ。
俺なんかを間に挟んでウジウジしてないで、さっさと飛び越えれば良いというのに。
「 や、やっぱり痛いですか……？ 」
「 Aちゃんの愛があればこれくらいなんともないよ 」
「 なんでこんな時までキモいんですか…… 」
彼らがナチュラルにお互いを想いあっているとき、俺は毎回思わされる。
あぁ、あそこには入れないな、って。
最初は、遊び半分、気になる半分。それくらいの気持ちだった。
あの時は面白くなるかも、なんて思って『 一目惚れ 』とかいう乙女チックな単語を使ったけど、そんなんじゃない。単純に、面白そうだったから。
俺という人間は元来そういう奴だ。
彼女がどう思っているかはしらないが、所詮自分の人生を豊かに彩りたいだけの、愚かな奴でしかない。
それなのに今こんなにも俺が悩んでるのは、不覚にも、知れば知るほどしずくさんを好きになってしまったせいで。
―――『 ねぇ、河村。辛くないの。そのポジション 』
辛くないのか、なんて。そんなの、辛いに決まってるだろ。
だがこれは全部自分で蒔いた種だ。勝手に始めて、勝手に惹かれて、勝手に終えた。こんな馬鹿な話、誰に出来る。
「 じゃあ、僕はお邪魔みたいだから、先に帰るよ 」
「 え、お邪魔……？ 」
「 しずくさんは知らなくて良いよ 」
一部始終を見守っていたわけではないが、さっき伊沢を殴った男がしずくさんの恋愛観に一枚噛んでいるのはなんとなく分かった。
けど、それを聞き出すのは俺ではない。
ここからはどうせ、しずくさんの過去を話して、伊沢と良い感じになるんでしょう。
だったら俺という存在は圧倒的に邪魔だ。
仕方ないから、今日は大人しく退散してあげるよ。
「 ……今日、付き合わせるかな、あいつ 」
オフィスまでの道のりにつきながら、あいつ、こと福良の顔を思い浮かべる。
前は俺が付き合わされたのだ。今日は俺が付き合わせる番だろう。
どうせ、近いうちにあの賭けごっこは終わるんだ。
俺の完全敗北という形で。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年1月6日 19時
