【完】イザワタクシー -2-【izw】 (ページ2)

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ファーストキスは重要ページ2

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　きっと俺には、彼女を幸せに出来ない。
　だからこれで良いんだ、良いんだよな。

　柄にもなくそんなマイナスなことを考えてしまうほどには、俺のハートはズタボロだった。

　全部遅かった。
　白石さんの手を払うのも、裏口に向かって走り去るAちゃんを追いかけるのも……河村さんとAちゃんの関係に気づくのも、全部。

「はぁぁぁぁぁ」
「いつにも増して壮大なため息だね」
「福良さぁん」
「うわ、なに、隈ひど」

　俺には、アピールする根性はあってもAちゃんを奪う度胸はない。

　昨日はあれから逃げるように家に帰って、河村さんに衝撃のLINEを貰って、ショックで泣くことも忘れたまま朝を迎えた。
　きっと本当はあのLINEを貰った時点で、家から飛び出して河村さん家に行くべきだったんだと思う。

　でも俺には出来ない。
　大切な人から大切な人を奪うなんて、そんなの、あまりにも最低じゃないか。

「 ……今なら八方塞がりについて一時間は熱弁できそうです」
「取り敢えずヤバイ心理状態であることは察した」

　恐らく今の俺の心情は思春期の男子高校生より面倒くさいし荒れている。

　キスだって、今まで恋と無縁だったからあれが初めてだったし、ほんとはその初めてをAちゃんとしたかったし、いや、こんなの考えてる時点でキモいって分かってるけど、でもそれくらいの願望抱いたって良いじゃん。俺だって健全な男なんだよ！好きな子とファーストキスしたいんだよ！もう取られたから、正確にはした〝かった〟だけど！なんだって良いだろ！

　いくらそうやって心の中で悲痛の叫びをあげようとも、昨日あった現実は変わらない。
　結局俺はどうしようもなく意気地無しなのだ。好きな子一人追いかけられない。

　羨ましい。テレビの中で友人相手でも真っ向から向かっていける主人公が、今だけはなによりも羨ましい。

「 ……福良さん、今日Aちゃん来ますか」
「一応その予定だけど……珍しいね。伊沢がAちゃんの予定把握してないなんて」

　福良さんの言葉にも気の抜けた反応しか出来ず、彼が教えてくれた情報をゆっくり噛み砕く。
　今日Aちゃんは出勤予定……今日Aちゃんは出勤予定……今日Aちゃんは…………はっ？出勤予定？！

　待って、待って、俺は一体、どんな顔をして彼女に会えば良いんだ。

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