合法的に会う方法 ページ9
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伊沢が見せてきたのは、なんて言ったら良いのか、普通すぎるくらい普通の女性が写った写真だった。
少しムスッとしていて、写真を撮られていることが不服そうな表情。伊沢のことをあまりよく思ってなさそうな印象だ。
彼はこの画像を見てずっと「 くふふふふ 」と笑っていたのか。それはそれで怖いな。
お前、端から見たら普通にストーカーだからな?幾らその写真が合法で手に入れた物だとしても、女性の画像見て笑ってる奴は普通に不審者だから。幾ら合法でも。
何度でも言うけど、合法でも不審者だから。
「 河村、顔顔 」
「 ……これは誰であってもこんな顔になると思うんだが 」
「 あぁ、やっぱりしずくちゃんの画像見てたんだ 」
「 小動物でしょ? 」
「 うーん、まぁ雰囲気はね 」
伊沢と自然に会話をしているところを見ると、福良はなにを見ているか分かっていた上であんな質問を投げ掛けていたのだろう。
こいつ絶対半分面白がってるな。
『 しずくちゃん 』という固有名詞に聞き覚えがあるのか、先程まで不気味がっていたライター達も「 なーんだ 」と言わんばかりに作業に集中し始める。
……もしかして、伊沢がお熱だというアルバイトの子が『 しずくちゃん 』だと知らないの俺だけなのか?確かに今知るのは遅すぎか。
伊沢の画像を見てもピンと来ないのだから、もしかしたら俺はこの半年間、一度も彼女と会っていないのかもしれない。
あり得ない話ではない。基本自宅で作業をしているライターとは、直接顔を合わせていない人物も何人か居る。
俺も毎日このオフィスに居る訳じゃないから、すれ違いでもしたのだろう。
「 あ〜Aちゃんが居たら頑張れんのにな〜 」
「 そんなこと言ったって、しずくちゃんが滅多に来れないの知ってるでしょ 」
「 だってぇえええ 」
どうやら俺の予想は当たっていそうだ。
にしても、その『 しずくちゃん 』とやら絡むとこの男はここまで気持ち悪くなるのか。
半年前からこんな状態だったのだろうが、今日まで目の当たりにすることがなかったのは、幸か不幸か。
まぁ恐らく遅かれ早かれ知ることにはなっていたのだろうが。
「 あ、そうだ。Aちゃんのバイト先に行けば合法的に会えんじゃん! 」
ただやっぱり、当分は知りたくなかった。
俺のCEOが……ッ!
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時