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料金はツケ払いで ページ5









「 ……オフィスまでお願いします 」
「 お安い御用! 」







 あんな言い方しておきながら、彼は私がこう返答するって分かっていたんじゃないだろうか。
 だってなんか、無駄に笑顔が綺麗だし。作戦成功って言ってる子供みたいな笑顔だし。

 結局、どう足掻いても彼の掌って訳か。

 それを分かっていて転がされている私も、相当素直じゃないんだろうけど。
 これは素直になりたくないと思わせる社長が悪い。異論は認めん。



 外観から分かる高そうな車に、送ってきてもらった時と同様に乗り込む。

 何度乗っても、彼の車の高級感にはなれない。上には上がいるというのは知っているが、それでもシートの感触だとか、所々にある金色だとかに、小心者の私はかなり怖じ気づいてしまう。








「 はい、着いたよ 」
「 あ、ありがとうございます。助かりました 」
「 いやいや。俺はAちゃん専用のタクシーだからね。いつでも呼び出してよ 」







 お願いした通りにオフィス前まで送り届けてくれた彼にお礼を言って降りれば、窓を下ろした彼と目が合う。
 なんだかまた嫌な予感がする。

 その予感も案外馬鹿に出来ないもので、社長は窓から右の掌を出すと、にっこりと笑っていつもの言葉を紡いだ。







「 じゃあご利用料金で愛の告白を 」
「 払うわけないでしょうが 」
「 つまりツケ?!将来纏めて言ってくれるってこと?! 」
「 想像の飛躍が激しすぎて怖いです 」







 なにやらギャーギャー騒いでいる社長は放っておいて、もう一度深々と頭を下げてから、エントランスを潜る。

 オフィスに戻ると、私があまりにも遅かったせいか、別の企画の撮影が始まっていた。
 今回の撮影には参加しない福良さんは普通に編集部屋で作業をしていて、平謝りしながら買ってきたものを差し出す。



 うぅっ、やっぱり間に合わなかった。
 社長と余計なコントをしてしまったのも原因だろうけど、一番の原因は降水確率50%だった雨が降ったことだ。くっそ。雨、てめぇ覚えとけよ。







「 ほんっとすみません……! 」
「 良いよ良いよ。こっちこそ、雨の中買い出しなんて頼んじゃってごめんね 」
「 いやいやっ、引き受けたのは私の方なので……!撮影の順番変えさせてしまってすみません……! 」







 福良さんが優しい方で良かった。敵には回したくない方だが、味方である今はとても心強い。
 神様ありがとう。







エールで全て清算→←迎えもイザワタクシー



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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時

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