切っ掛けは雨宿り ページ35
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「 伊沢はさ、なんでそんなにしずくちゃんのことが好きなの? 」
「 あ、それ聞いちゃいます?いやー実はですね 」
「 やっぱ長そうだから遠慮しとく 」
「 その気にさせてのそれは重罪じゃね? 」
Aちゃんと別れて大人しく戻ってきたオフィスで黙々と仕事を片付けていると、斜め前の席でカタカタとキーボードを叩いていた福良さんが、チラリと俺の方へ視線を寄越してくる。
それに俺も視線を返すと、彼は仕方なさそうにもう一度「 なんでそんなにしずくちゃん追っかけ回してるの? 」と質問を投げ掛けてくれた。
なんだかさっきよりも質問に悪意が混ざっているような気がするのは俺だけだろうか。
まぁ良いまぁ良い。なんにせよ俺がAちゃんが大好きで追っかけ回しているのは事実だ。その理由が知りたいという意味では、どちらの質問も同じだろう。
「 まずツンデレなとこが良いですよね。だってあの子、嫌そうな顔はするのに絶対本気で追い返さないんですよ。その度にツンデレ!!絶対ほんとは俺のこと好きじゃん!!!俺も好き!!!ってなります。はぁ〜好き 」
「 ごめん質問の仕方変える。なんでそんなにしずくちゃんのことを好きになったの? 」
呆れ顔が若干引き顔に変化しつつも、ちゃんと質問はしてくれるやさしー福良さん。こういうところがママと言われる所以なのだろう。
さて、質問は確か、なんで俺がこんなにもAちゃんを好きになったのかだったか。
ここだけの話、実は俺は入社前から彼女のことを知っていた。その時には既に好きだった。
ただ知っていたからとか、好きだったから採用したとかでは、断じてない。流石にその辺の分別はついている。自分の武器を自分で汚すような真似は絶対にしたくない。
「 好きになった理由すか。まぁいろいろあるんですけど……最初は、優しいところに惚れました 」
「 まぁ確かに、しずくちゃんって意外と世話焼きだよね。乾とかよくネクタイ締めてもらってるし 」
「 羨ましすぎて夜道かなにかで抹殺したくなりますよね 」
「 しずくちゃん絡むと道徳観無くすのやめてくれる? 」
「 はぁ〜〜なんで俺ネクタイ自分で締めれるんだよ〜〜〜〜 」
ネクタイ締めてもらうのはもう夫婦じゃん。結婚待ったなしじゃん。なんであいつはもうそれを体験してんだよ!!許さねぇ!!!いつか絶対唐辛子食わせてやる!!!!
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時