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タクシーレーダー発動中 ページ27









 あの日を境に、私達の間に引かれていた線は明白になった。
 今までは枯れ葉やら砂やらで隠れていたのかもしれないが、そんな誤魔化しはもう通用しない。誰から見たって私達は、アルバイトと社長以上のなにものでもないのだから。



 伊沢さんが風邪を引いてから数日。

 仕事を終えてすぐ逃げるようにオフィスを出てから、あそこには一度も顔を出していない。
 元々そんなに顔を出す人間ではなかったから特に怪しまれてはいないだろうが、いつかは顔を出さないといけないと思うと、今から胃が痛い。



 あ〜今もキリキリいってる気がするぅ。








「 なに、あんた好きな人にこくってフラれた? 」
「 なんでそうなるの……てかそもそも好きな人居るって言ってないし 」
「 だってあんた今日全然食べてないじゃん。恋すると食事も喉を通らなくなる〜って言うし 」
「 ちょっと食べてないだけで恋扱いされるのは心外です 」








 正直食欲はあまり湧かないが、友人に『 恋する乙女 』扱いはされたくない。取り敢えず心配されない程度には食べよう、と学食のワンコインうどんをズルズル啜る。

 今私は大学の友人と共に大学の食堂に来ている。理由は昼食をとるため。
 大学生のお昼と言えば大抵は学食だろう。安いし。なんたって、安いし。その辺のお店にいくより何倍もお得だ。









「 あ 」
「 なに 」








 黙々とうどんを食べ進めていると、突然友人が窓の外を見て声をあげる。珍しい。食事中はあまり周りのことは気にしないのに。
 しかし、視線の先を追いかけてようやく彼女が声をあげた分かった。

 分かってしまった正体に思わず「 げっ 」と顔をしかめてしまったのは、完全に不可抗力。



 大学の外では大粒の雨が地上に降り注いでいた。窓にも雨が叩きつけられており、当分は止みそうに無さそう。







「 雨かぁ…… 」
「 いや、あんたそっちじゃないでしょ気づくとこ 」
「 え、それ以外に気づく要素なんてある? 」
「 ほら、あそこ 」







 どうやら私は検討違いの気付きをしてしまったらしい。友人に言われ再度人差し指の先を辿ると、そこには、一人の傘を差した男の人。
 見たことのある顔だ。……いや、私にとっては見覚えしかない。


 なんでここに居るんだと一瞬眉間にシワが寄るが、これだけどしゃ降りなら、『 Aちゃんレーダー 』とやらが反応しても別に可笑しくはないか。








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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時

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