後輩を守ってこそ先輩 ページ11
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「 てか、エプロン姿のAちゃんも可愛いな。写真撮って良い? 」
「 セクハラで訴えますよ社長 」
「 ごめんごめん。あ、アイス珈琲一つ 」
「 ……かしこまりました 」
たく、あの人の発言はどこからどこまでが嘘なのかさっぱり分からない。かと思ったら普通に注文してくるし、なんなんだほんとあの人は。
今日も今日とて社長に振り回されている自分を自分で慰めながら、受け取った注文を厨房に伝えに行く。
にしても、本当にこのお店は客足が途絶えない。もうお昼は終わる時間帯だと言うのに、かなりの人気店になってしまったようだ。
バイト終了時間まであと一時間。
今回も社長が来店してきたこと以外は平穏無事に済みそうだと、客からは見えない所でぐぐっと体を伸ばす。
「 良いじゃねぇか。お客様は神様なんだろぉ? 」
……が、そう上手くは行かないのがこの世の理。
なんだか涙が出てきたよ。
店内からは丁度死角になっている場所から飛び出すと、うちで一番可愛いとされている後輩店員が一人の男に腕を掴まれて顔をしかめていた。
美人というのも時として困りものだな。
私には分からない『 困り 』だが。
「 すみませんお客様。当店はそのようなお店ではございませんので、女性店員との触れ合いをお楽しみになられたいのでしたら、他のお店に行かれてはどうでしょう? 」
「 あぁ?なんだてめぇ。ここの店長か? 」
「 いいえ。しがない一店員でございます。ですが、後輩が怖がっているのを傍観するわけにはいきませんので 」
面倒ごとにはなるべく関わりたくはないが、これでも私は彼女の先輩だ。こういう時助けてあげれないと、先輩なんて言葉はこの世に必要ない。
店内中の視線を受けながら彼ら二人の元に歩み寄り、私は至極冷静な口調で男性に語りかけた。
こんな低脳が世に蔓延っているから世界はいつまで経っても良くならないのだ。
大体な、『 お客様は神様 』って言うのは『 店側 』の心構えであって、てめぇらが好き勝手にして良いって意味じゃねぇんだよバーカ。
「 なんだと?俺が怖がらせてるって言いてぇのか? 」
「 左様でございます 」
「 っ……こんの 」
あ、これは、ちょっと煽りすぎたかもしれない。
そう危険を察知した時には既に、私の目の前では大きな手が振り上げられていた。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時