゜*。TAXI〜true love2。*°

鏡の中の自分 ページ36

チャンミンを見送って、一通りの家事をして

エプロンを外して、ルージュを引き直す。

鏡に映るこの姿を、私は何度見てきただろう。


ここでの生活から逃げるように。
空っぽの心に潤いを求めるように。

何度も何度もジェジュンに逢った。


あの頃は、チャンミンに対してもジェジュンに対しても、思いやりどころか、罪悪感のひとつも感じていなくて。

ただ空っぽな自分の心と欲望を叶えるためだけに、彼らを利用していたのだと思う。


今更ながらに、自分のしてきた事がどれだけ残酷な事なのかがよくわかる。


チャンミンを思うと切なくて。

ジェジュンを思うと申し訳なくて。

なのに、自分はどうしたいのか、どうするべきなのか、そんな簡単な答えさえも見いだせていない。


買ったばかりのルージュが、私の唇の上でてらてらと光ってる。

きっとジェジュンはあの広い家で、私を待ってくれているのだろう。




「…行ってきます」


玄関で呟くと、エコーのかかった自分の声が、誰もいない家に小さく響いた。


……なんだろう、この気持ちは。

突然、とてつもない寂しさに襲われた。

まるで、もう二度とこの家には帰ってこられないような寂しさに。


……ううん。

そんなことはない。有り得ない。


帰りはスーパーに寄って、チャンミンの好きな金目鯛を買ってこよう。

夜はふたりでテレビを見ながらワインを開けるのもいいかもしれない。



そう思っているはずなのに


もうひとつの想いが


エレベーターを降りた私の足を、急がせる。

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