゜*。TAXI〜true love2。*°

変わらない朝の風景 ページ35

カーテンを開けると、優しく差し込む陽射し。
ポストに届けられる新聞。

なんの変わりもなく、いつもの日常が始まる。

例え今日が誰かの特別な日になり得るとしても。



「おはよう、チャンミン」

大根を刻む手を止めて視線を向けると

「おはようございます…」

眠い目を擦るようにして、彼がゆっくりと歩いてきた。


「よく眠れた？」

「はい。Aさんは？｣

「うん｣

「ん。良かった｣


そう言ってソファーに座り新聞を広げた彼の後ろ姿を見ながら、切ったばかりの大根をお鍋に入れた。


……私たちは嘘つきだね。

だって、知ってる。

昨夜。

当たり前のように同じベッドに入って

何も言わずそっと繋がれた手が、朝まで解けなかったのは

解けそうになる度に

互いに何度も何度も繋ぎ直したから。


好きだな、って思う。
愛しいな、って思う。
これからも一緒にいられたらいいのに、って心から願うけど、それは無理なのかもしれない…って

私たちは気付いている。



「今日はあまり遅くならないと思います｣

いつも通り出勤の準備をしたチャンミンが、玄関で靴を履きながらそう言った。


「うん、わかった」

「夕飯は、久しぶりに煮魚が食べたいです」

「じゃあチャンミンの好きなお魚、買ってくるね｣


そう伝えると、「…うん」と控えめに頷いて。



「じゃあ…行ってきます」

「行ってらっしゃい、チャンミン」



笑顔で手を振り合う私たちだけど

お互い顔を見れないのは

感情が溢れてしまいそうになるからだ。

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