゜*。TAXI〜true love2。*°

揺れているのは…誰〜CMside ページ30

どうしてアイツに会いたいだなんて言ったんだろう。
どうしてアイツと話してみたいだなんて思ったんだろう。

今日、アイツに会うまでは、自分を疑うことなんて一度もなかった。

彼女の傍にいるべきなのは俺だと、確信すらしていたのに。


「チャンミン……？どういう意味…？｣


彼女の声が震えている。
不安に満ちた目で俺を見ている。


こんなはずじゃなかった。
こんな顔をさせるつもりなんて、これっぽっちもなかったのに。



「Aさん…コレ、聴いたことありますか？｣


そう言って差し出した俺の手元に、彼女の視線が落ちた。


「な、に……？CD…？」

「そうです。Aさんに渡してくれと頼まれました｣


俺の手からCDを受け取った彼女が、アイツが書いたであろう文字を確認する。



「…TAXI…？」

「…アイツがAさんのために作った曲だと｣


そう言うと、何かを思い出したかの様に「あ、」口を開いた彼女。


「…聴いたことありますか？」

「前に一度だけ……。でもどうしてコレをチャンミンに……？｣



……そんなの。

その答えはわかりきっている。

アイツは伝えたかったんだ。

渡したCDを俺が聴くだろうと想定した上で。

自分がどれだけAさんを想っているのかを。
どれだけ彼女を求めているのかを

俺に知らしめたかったんだ。



そして、その罠に

俺は情けないほど簡単に嵌ってしまった。



「Aさん。聴きましょう｣

「え……」


戸惑う彼女の手からCDを受け取って、リビングのステレオにセットする。


彼女を想って作った曲だと知って、アイツと別れてから公園のベンチに座り、カバンからプレイヤーを取り出して再生したのは3時間ほど前。


動けなかった。
聴かなきゃよかったと思った。


苦しい、切ない。

深い愛情を感じずにいられないその歌がアイツの声だと気付いた時流れた涙。

悔しかった…？
嫉妬した…？

泣きたい訳じゃないのに、とにかく揺さぶられた感情を抑えられなくて

しばらく涙が止まらなかった。



でも……

その時思った。

コレはAさんも聴かなきゃダメだと。



「ちゃんと聴いて。
聴いてから、もう一度話し合いましょう｣



そして。その上で。

俺がいい、と。
一緒にいたいのは間違いなく俺だと

そう言って欲しいから……。

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