゜*。TAXI〜true love2。*°

夫の権利〜CMside ページ26

「…聞いてます？｣


「聞いてるよ」


そう言ったっきり何かを考えるように黙った男。

この様子だと、俺の真意は伝わったようだ。
この男が余程のバカじゃなければ、の話だが。


会ったらまずは謝罪をと、最初から考えていた。

子どもが悪いことをしたら、親が一緒に謝ってくれるのと同じように
俺の妻であるAが間違いを犯したのなら
夫である俺が謝るのは当然だ。


そして、その権利があるのも俺だけだ。



殴ったり、罵倒したりなんてしてやらない。
嫉妬なんてしてやらない。
してるとしても、決して口に出したりしない。


そんなことをしたら、Aさんとこの男の関係を、認めることになってしまうから。

認める必要なんて全くない。だって、二人の関係は『過ち』なのだから。


何も言わず俺を見ているだけの男から視線を外し、テーブルの上のアイスコーヒーを飲んだ。


グラスの中で、小さくなった氷がカラン、と音を立てた時。



「……あのさ」


それまで黙っていた男が口を開いた。



「話、終わった？」

……は？


「と、言うと？」

「終わったんなら次は俺が話していい？｣

「話……？あー、別にあなたに謝ってもらう必要はありませんから｣


だから、アンタに謝る権利はないんだよ。



「謝る…？んー、じゃあ謝らないよ。
でも、Aと別れるつもりも全然ないっから。
っていうか。Aを俺にちょうだい｣


…少しの時間の後「……は？」って。素っ頓狂な声が出た。


そんな俺を見て、少し身体を斜めにずらして脚を組み直した男。



「俺、Aと結婚しようと思ってるんだよね｣



……な、にを言ってる？

何を言ってるんだ、コイツは。

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