゜*。TAXI〜true love2。*°

想像を超えて〜CMside ページ23

どんな男なんだろう、とか。
どんな容姿なんだろう、とか。

彼女の影に存在する男の事を、幾度となく想像してきた。

それは意図的なものではなく、無意識に頭の中を支配してしまう様な嫌な感情だったのだが。

今となっては想像して嫉妬して苦しんできたあの時間全てが、無駄だったように感じる。


な、んだコイツは……。
男……だよな…？

俺の想像を遥かに超えるほどの男の容姿。

真っ直ぐに俺を見る大きな瞳。
滑りの良さそうな白い肌に、赤く潤う唇。

パッと見、女性だと言われれば納得してしまいそうなほどの透明感……。



「……あの？｣

ハッとしたのは、遠慮がちに俺を覗き込んだ男の眉が、わかりやすく歪んだから。

……何を考えているんだ俺は。
一瞬でも見蕩れてしまった自分をぶん殴ってやりたい。


キュッと唇を噛み締め、カタン、と椅子から立ち上がった。


「御足労をおかけしてすみません。Aの夫のシム・チャンミンです｣



……驚いているのか、呆れているのか。

どちらとも取れる表情で俺の右手を黙って見ているだけの男に、差し出した手をスッと引っ込めた。



「座ってください。あ、何か注文しますか？」


大丈夫。きっと上手くやれる。
何度も何度も頭の中でシミュレーションしたように、余裕のある態度を見せつける。


大丈夫だ。
心の中までは見ることは出来ないのだから。

メニューを開いて男の前に差し出すと、男がゆっくりと腰を下ろし、そして直ぐに「すみません」店員を呼びつけた。

先ほどの女性がいそいそとやってきて、俺らの目の前に立った。


「コーヒーを」

「ホットでよろしいですか？」

「お願いします」


女性が手元のメモにサラサラと書き写し、笑顔を浮かべて戻っていく。


その様子を見ながら感じた少しの焦り。

落ち着け。
落ち着け。

自分に言い聞かせながら、行き場のなくしたメニュー表を元に戻した。

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