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不安が襲う〜CMside ページ12

大きな契約が上手くいって、祝杯をあげようという先輩の誘いを断って、家に帰ってきたのは19時頃。

持っていたキャリーバッグを玄関に放置して、リビングへと続くドアを開けた。
その途端、一気に鼻を擽るいい匂い。

俺を見つけた彼女が、キッチンから駆け寄ってきた。



「おかえり、チャンミン」

「はぁ、はぁ…、Aさん…」

「どうしたの?そんなに慌てて」

「どうしたのって…」


俺を見て、「ん?」って首を傾げる彼女は、昨日別れた時と何ら変わりはなくて……。



「大丈夫ですか?」

「何が?」

「だってさっき電話で……」


泣いてたように思ったけど……。


「出張お疲れ様!お腹空いたでしょう。もう出来るからチャンミンも着替えてきて」


にこっと笑ったAさんが、キッチンへと戻っていく。
その姿はまるで鼻歌でも歌っているかのように楽しそうで…。



「…わかりました。じゃあ着替えて来ますね」


クルリと踵を返し、玄関に投げ置いたキャリーバッグを持ち寝室へ向かい、

汗でびっしょりと濡れてしまったワイシャツを脱ぎながら、ベッドに腰をかけた。



「良かった…」

ふぅ、と洩れた安堵の息。

今の今まで俺を覆っていた真っ黒い不安が、サーッと波のように引いていった。




昨夜。Aさんのケータイは、何度かけても繋がらなかった。

やっと電話が繋がったと思ったら、泣いているような声で『話しがある』なんて切り出すから。


もしかしたら…俺がいない間に何かあったんじゃないか、とか。

俺の元からいなくなってしまうんじゃないか、とか。

そんな恐怖が一日中俺を襲った。




「わー、凄く美味そうじゃないですか!どうしたんですか、今日はまた一段と豪華ですね」


俺の勘違い…だった?


「ふふ、何だか色々作ってみたくなっちゃって。久々に頑張っちゃった」


目の前の彼女の笑顔は、真っ直ぐに俺に向いているし。


「朝からあまり食べてなかったんです。めちゃくちゃお腹が空いてきました」

「うん、食べて食べて!」

「Aさんも食べますよね?」

「もちろん!」


安心したらどっと空腹感が押し寄せた。

大丈夫。何も心配なんかいらない。

いつもと同じだ。


……気になるとしたら、ほんの少し。




ほんの少しだけ、いつもより彼女のテンションが高いんじゃないかな…と思うくらいで……。

最後のお料理→←見失った心



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ユチコ(プロフ) - miyuさん» miyuさん。わー、泣いてくださったなんて(;▽;) 一緒に心を揺さぶって下さりありがとうございました(*´˘`*) 彼らのその後……!?え、私も気になる…笑 (2021年1月11日 22時) (レス) id: 9e2d27727e (このIDを非表示/違反報告)
miyu(プロフ) - ユチコさん!ヤバいです!TAXI!泣きました!物語りにどんどん引き込まれて…心を揺さぶられるstoryに久しぶりに出会いました。今更ですが、その後…も読んでみたいです♪気が向いたらお願いします 笑 いやぁホン (2020年12月18日 23時) (レス) id: aef111b54a (このIDを非表示/違反報告)
ユチコ(プロフ) - YUKIEさん» YUKIEさん。初めまして。コメントありがとうございますヽ(*^^*)ノこのお話を見つけて下さりとても嬉しいです〜☆passですが、現在はコミュのメッセージ機能を使って配布させて頂いております。もし宜しければ、そちらからよろしくお願いします☆ (2019年5月9日 14時) (レス) id: d9338454cd (このIDを非表示/違反報告)
YUKIE - ユチコさん、はじめまして。最近東方神起にはまり、たどり着きました。このお話、不倫ものなのに、とても美しくて、切なくて、とても引き込まれてしまいました。是非パスワード教えて頂きたいです。よろしくお願いします。 (2019年5月7日 11時) (レス) id: 8fe0687aa2 (このIDを非表示/違反報告)
麻樹子(プロフ) - ユチコさん お返事ありがとうございます。早速拝読させていただきます。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: ce80ff39ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2016年7月8日 15時

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