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彼がわずかに身じろぐ。帽子を浮かせ、目の端で私を確認すると、淡白に訊いた。
「なんだ」
私はぎゅっと指先の力を強くした。
『一緒に寝て』
私は袖を睨みつけ、我儘を言う子どもみたいにそう言った。
疑わしげな彼の視線を、彼の貸してくれたワイシャツ越しに感じる。
今更耐え難い羞恥心に襲われて、私はぱっと手を離すとベッドの中に戻った。次元さんに背をむけて、アッパーシーツを鼻の上までかける。
馬鹿みたいだ。数秒前の自分を殴り倒してやりたい。
私は無理やり目を閉じた。苦し紛れにシーツを引っ掻く。
と、そのとき。ベッドが軋んだ。
え、と思う間に、マットレスが深く沈む。背中の後ろで、シーツが擦れる音がした。
信じ難くて、私は振り返った。
次元さんは私の隣で寝ていた。仰向けで、帽子を顔の上に置いて。まるで死体になる準備みたいな寝方だった。
おずおずと再び身体を横たえる。規則正しい、掠れた彼の呼吸が聞こえる。
私はバレないように少し下がって、彼に身を寄せた。背中に、彼の腕のぬるい体温が広がっていく。
私はそのまま目を閉じた。嘘みたいに頭の中の騒音が薄れて、遠くなっていく。
私の呼吸と、次元さんの寝息が交互に聞こえる。あれだけうるさいと思っていた雨の音が、子守唄に変わる。私はいつの間にか、微睡みの中にいた。
そして、ふと気がつく。
私の腕が、次元さんの腕に緩く絡んでいることに。
慌てて腕を解く。私、いつ寝返りをうったんだろう。気づかれたかな──私は彼を見上げた。相変わらず静かに胸が上下しているだけだった。ほっと胸を撫で下ろし、彼から離れる。
ところが。
「A」
突然名前を呼ばれて、私は飛び上がった。
『っ、ごめん、私自分で気づかなくて、でももうしないから──』
「悪かったな」
『えっ？』
私は声をひっくり返した。一体何の話だろう。謝りたいのはこっちの方なのに。
『……何が？』
「俺がもう少し早けりゃ、あんたは今もおやっさんとあの店の中だ」
私は半ば呆気にとられた。
そんなこと、私は思いもつかなかった。
きっと彼が強いからだ。強いからこそ、もう少し何かできれば、と考えてしまう。
私は何故だか無性に腹が立った。
彼は分かってない。彼があの場にいたことで、今そばにいることで、私がどれほど救われているのか。
『謝んないでよ、私はラッキーだと思ってるのに。助けに来てくれたのが、次元さんで』
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O(プロフ) - 結音さん» ありがとうございます、とても嬉しいです😭 ハリポタ以外作っては消しての繰り返しですが、何卒よろしくお願いします… (3月27日 22時) (
レス) @page5 id: 4c954a2b54 (このIDを非表示/違反報告)
結音(プロフ) - Oさんとは趣味が合うのか私が好きな人ばかり書いてくれるのでいつも楽しみに見てます。hpの方も楽しみにしてます！ (3月25日 7時) (レス) id: 11d763baed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：O
| 作成日時：2024年3月25日 1時
